第3章 第35話

夜勤三日目に出来なかった仕事を、四日目と五日目に分けて片付けて、ドタバタした日々だった。

遠藤君は仕事をしばらく休むらしい。


「ゆーきな。」


夜勤最終日を狙ってたのか、秋奈が朝早く店に来た。


「秋奈、どうした?」


「もうすぐ亮太君が出勤でしょう?」


「あっ、今日は早くから来る日なんだ?

あれ、何で知ってるの?」


「連絡先交換したから。」


「そうなんだ?」


秋奈が来てから、五分くらいして、亮太君が来た。


「秋奈さん、すまないっす。

待たせたっす!」


「いいのよ、遅刻してないわよ。」


「すまないっす。」


「ううん、それよりも……。」


「あぁ……そうだったっす。」


何だか二人の様子がおかしい。


「雪夏さん!」


「え?

亮太君、声が裏返ったよ?」


「緊張するっす!

今日、働けるか不安っす!」


「え?

どうした?

調子悪い?」


「違うっす!」


何だか亮太君がテンパってる?


「あのっ、雪夏さん!」


「はい。」


「あのっ、俺と秋奈さん、付き合う事になりました!」


「え?」


ちょっと眠い時に大事な話をされている気が……。


「雪夏、大丈夫?」


「うん……。

凄く大事な事を言われたような……。」


「私、亮太君と付き合うわよ。」


「うん……あれ……何か涙が……。」


「ちょ、何で泣いてるのよ!」


嬉しい報告で涙が溢れた。


「え?

何で亮太君まで泣いてるのよ?」


「も、もらい泣きっす……ぐすん……。」


「もーう、二人して泣かないでよー!」


「だって……。

って、秋奈さんだって泣いてるじゃないっすか。

抱きしめていいっすか?」


「公衆の面前でしょ!」


「そんなの関係ないっす。」


亮太君が秋奈を抱きしめるのを見ながら、私はシクシク泣いている。


「え?

ちょっと、皆で何で泣いてるの?

修羅場?」


轟さんが困ったような表情で話しかけて来た。


「いや、嬉しくて、言葉にならないです。」


「ここで告白でもしたんですか?」


「報告です。」


「え?」


「付き合いましたって聞きました。」


「あぁ……それは良かったけど、何で貴女がそんなに泣いてるんですか?」


「嬉しすぎて、こんなです。」


「酷い顔ですね……。」


「そんな……。」


「ティッシュあげますから。」


「足りませーん!」


「あぁ……分かった分かった。

箱ごとあげます。

店にゴミ捨てないで下さいね。」


「分かってます。」


私は沢山ティッシュを使った。

後で返さないと怒られそう……。


「亮太君、私、学校行くから。」


「大丈夫っすか?

保冷剤持ってって下さい。」


「フフッ、保冷剤。」


「ハハハ!」


よく分からないけど、秋奈と亮太君が保冷剤を見て笑っている。


「じゃあ、駅まで一緒に行こう?」


「うん。」


仕事が終わった私と、これから通学の秋奈が一緒に歩き出す。


「朝からゴメンなさい。

私達と雪夏の予定を考えたら今朝になっちゃって。」


「ううん、嬉しかったよ。

ありがとう。」


「こちらこそ。」


「じゃあ、行くね。」


「行ってらっしゃい!」


私が秋奈を見送る。

何だかいつもより、シャキッと歩いている気がした。

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