第3章 第34話
凄く嫌な予感が的中したのは夜勤三日目の事だった。
たまたま休憩に入ろうとした時に声が聞こえた。
「佐藤先輩、久しぶり。」
「え?」
「覚えて無いですか?
俺、
「ゴメン、遠藤さんは知っているけど、弟さんは知らなくて。」
「姉を傷付けて、そんなあっさり話すもんなんですか?」
「え?」
何の話か気になる……。
「小豆沢さん、入らないんですか?」
立ち止まっている私に轟さんが声をかけた。
「話し声がして……。」
「え?」
「ちょっと様子見てから入ろうかと?」
「誰が話してるの?」
「遠藤君と配送の……。」
「え?
何で?」
「分かりません。
姉を傷付けてとか?」
「姉を?
配送の彼って、雅美の好きだった人?」
「さぁ?」
何があったのか分からない。
「姉さんはお前のせいで入院したんだぞ!」
「……。」
「何か言え!」
「申し訳ないけど、遠藤さんに対して、恋愛感情は持てなかった。
だから、告白されてもゴメンと言うしか……。」
「何でだよ!」
遠藤君が叫んだと同時にガタッと大きな音がした。
「何やってるんだ!」
轟さんがドアを開けて大きな声を出す。
こんなに大きな声を出せるんだ……って驚いたけど、驚いてる場合じゃない。
ドアの向こうでは、遠藤君が佐藤先輩に掴みかかっていた。
「翔、やめなさい。」
「うるさい!
兄さんだって、姉さんが入院したの知ってるだろ!」
「知ってる。
でも雅美が入院したのは色々な事があったからだろう!
確かに失恋も引き金になったかもしれないけど、恋愛感情無いのに付き合って遊ばれるより良いじゃないか。」
「遊ばれたっていいんだよ。
それが姉さんの望みだろう?」
「姉さんの望みでも、彼の望みじゃないんだ。」
「そんなの関係ない!」
「関係ある。
お前はどんな女でも抱けるのか?
お前の大嫌いな隣の女子でも平気か?」
「嫌だよ、あんな女!」
「そういう事だ。
嫌いでも嫌いで無くても、姉さんが選んだように、彼にも選ぶ権利がある。」
「権利なんか無いだろう?
こいつ、とっかえひっかえ遊んでたらしいじゃんか!」
「とっかえひっかえって、彼の事情も知らずに言うんじゃない!」
「兄さんはコイツの味方なのかよ?」
「正しい人の味方なだけ。
お前の今の言動は間違ってる。」
「ふざけんな!」
遠藤君は叫んで、店を出て行ってしまった。
「拓哉、悪かった。」
「いや、轟さんに迷惑かけてすみませんでした。」
轟さんが佐藤先輩を拓哉と呼んだ……。
「あの……二人って知り合いですか?」
「あぁ……雪夏、知らないんだっけ?
轟さん、うちの姉の彼氏。」
「え?」
「姉がいるって知ってるよね?」
「聞いた事はあるけど、会った事は無いです……。」
「そうか。」
何だか色々とあって、頭の中の整理が出来ない……。
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