第3章 第37話

今日から早番。


「ゆ……雪夏さん……おはようっす。」


「おはよう。」


明らかに緊張してる亮太君が可愛い。


「保冷剤使いすぎると怒られるよ?」


「な、何を言ってるっすか?

まだ彼女には三回しかあげてないっすよ?」


「え?」


「いけないっすか?」


「ううん、二回は知ってる。

もう一回は?って思って。」


「あぁ……暑い日にハム買ったっす。

急にサンドイッチ作りたいって。

だから、ハムに保冷剤っす。」


「そうだったんだ?

実験に使うとかじゃないんだ?」


「ハムって実験に使うっすか?」


「分からない。

彼女に聞いたら?」


「えぇーっ?!」


「嫌なの?」


「違うっす。

そんな事も知らないんだ?って思われたくないっす。」


「大丈夫よ。

分からない事は聞いた方がいい。

彼女は教える事が好きなのよ。」


秋奈は誰かを馬鹿にするような人では無い。

そうだから苑香にも根気よく勉強を教えてくれた。


「何か彼女、忙しそうで、あんまり会えないんっす。」


「貴方だって忙しいでしょう?」


「あぁ……そうか。」


「連絡してるんでしょう?」


「うん。

毎日、秋奈さんらしいメッセージ来るっす。」


「秋奈らしい?」


「どんな授業があったとか。」


「え?」


「そういうの真面目っすね。

だから自分も同じように書くっす。

数学分からないっすとか。」


「それ教えてくれって言いたいの?」


「違うっす。

デートの誘い方分からないから、会う口実っす。

普通はデートしようって言うっすか?」


「言うでしょ?

デートしようとかじゃなくて、どこへ行きたいとか!」


「マジっすか。

今度言ってみるっす!」


亮太君と話すのが楽しい。

弟が出来たみたいな気分。


「貴女達、楽しいのは分かるけど、手も動かして!」


良子さんがやって来て……注意された。


「ごめんなさい。」


「いいのよ、楽しい事は。

でもお金を貰うんだから、最低限の仕事はしないとダメよ?」


「はい、申し訳ありませんでした!」


亮太君と二人で頭を下げた。


「亮太君。」


「はい。」


「ちゃんと避妊しなさいよ?」


「そういう事はしないっす!」


「え?」


「高校卒業までしない約束っす。」


「え?

今時、珍しい……。」


「そうっすか?

良子さんも高校生の時とか経験済みだったんっすか?」


「おばちゃんの初体験聞いて、楽しい?」


「うーん……。」


「それより働きなさい!」


「はい、頑張るっす!」


亮太君が妙に張り切っている……。

私もちゃんと働こう……。

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