第3章 第28話
佐藤先輩の抱きしめる手がゆるむ。
でも、泣いてグチャグチャな顔を見られたくない。
「まだ泣いてるの?」
「……ない。」
「え?
泣いてない?
顔、隠してるの?」
「見ないで!」
「何で?
泣き顔だって雪夏だったら可愛いんだよ?」
「……。」
「はぁ……何か腹減った。」
「え?」
「腹減ったわ。
何か買いに行くか。」
「この顔じゃ無理。」
「見せて。
本当に無理か、俺が判断する。」
私の顔を隠してる手を強引に……。
「あっ、無理か。
保冷剤あるから冷やしておけ。」
佐藤先輩はそそくさと冷凍庫に向かって、保冷剤を持ってきた。
「ほら、タオル巻いて使って。」
「……。」
「え?
俺にタオル巻けって思ってる?」
「うん……。」
「しょうがないなぁ。
ほら。」
小さいタオルで保冷剤を巻いてくれた。
頼むと嫌って言えないタイプなんだっけ……。
「あぁ……気持ちいい……。」
「え?」
「気持ち……いい。」
「は?」
「何、驚いてるの?」
「いや、ちょっとドキっとした。」
「え?」
佐藤先輩が動揺している。
「いやいや……別に……えっと、俺、何か買って来る。」
「何を?」
「め……メシだよ。」
「カップ麺とか無いの?」
「あるけど、雪夏、食べないだろう?」
「え?
食べるよ?」
「だって、前に食べないって……。」
「あの時、ダイエットしてたから。
だから、一緒にカップ麺食べよう?」
「いいの?
もっとヘルシーなのが良いんじゃない?」
「ううん、別に何でもいい。
美味しければ。」
佐藤先輩にこの幼児体型を見られたら……って思って、ダイエットしてたのを思い出した。
ポッコリお腹と同時に胸も痩せて、どうにもこうにもならず、悩んでいた。
「そっかぁ。
焼きそばとラーメン、どっち?」
「そのラーメン、うちの店にもあるヤツだよね?」
「うん。
これ置いてる店少ないから。」
「それ食べてもいい?」
「うん。」
本当は焼きそばが良かったけど、青海苔が気になるから諦めよう。
「はぁ……。
何か一緒にラーメン食うとか夢みたいだな。」
「何を乙女っぽい事を言ってるの?」
「こんな日が来ると思わなかった。
でも……。」
「でも?」
「やり直せない?」
「うーん……。」
「雪夏、女遊び激しい男、許せないんだよな。」
「そうだね。」
「あぁ……。
雪夏が別れようって言ったときに、しつこくすれば良かった。」
「え?」
「何で?
どうしてだよ?
って言えば良かった。」
本当はそれを言われたら、別れられなかったかも。
本音を言えたら、別れる必要なかったんだもん。
「ねぇ、雪夏。
友達からでいいから……。」
「え?」
「連絡先交換して下さい。」
「あぁ……それくらいなら……。」
そう、今日から私達は友達として、やり直す。
「あとさ、女子の連絡先全部消すわ。」
「え?」
「あっ、全部は無理か。
家族と会社の人と苑香ちゃんと雪夏。
これ以外消すわ。」
「別にいいよ、消さなくても。」
「え?
それって浮気しろって事?」
「カップルじゃないから、そこは自己管理お願いします。」
「分かった。」
そうやって話していたら、カップ麺が食べ頃に。
実は久々のカップ麺。
とても美味しかった。
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