第3章 第29話

カップ麺を食べた後、私はベッド。

佐藤先輩は床で寝た。

この距離がとても遠く感じたのだけど、一緒のベッドに寝るのは違う。

でも、こうして泊まってる時点で付き合ってるみたいだけど、やましい事は無い。


「おはよう。」


朝から佐藤先輩の声にドキドキする。

ちょっと眠そうな横顔がたまらない。


「そうそう、昨日の美容師だけど、警察に捕まったらしいよ。」


「え?」


佐藤先輩がスマホのニュースを見せてくれた。


「え?

何で……。」


「うん。

ヘアモデルの女子に睡眠薬入りの飲み物出して、何かやっちゃったみたい。」


「あぁ……。」


「でも、雪夏は俺の女だからって言っといたから、平気だよ。」


「何で?」


「喧嘩して、俺が勝っただけよ?」


「喧嘩したの?」


「若気の至りだよ?」


「危ない事は嫌だよ。」


「分かってる。」


佐藤先輩が喧嘩強いっていうのは、軽部先輩が言ってた。

でも喧嘩はして欲しくない。


「そうそう、雪夏、明日は休み?」


「うん。」


「明日、デートしない?」


「え?

だって仕事休んでいるんでしょ?」


「今日から夜勤するよ。」


「じゃあ、明日は寝てないと。」


「平気だよ。」


「ダメ!

過労とか困る!」


「じゃあ、雪夏が会いに来てよ。」


「え?」


「友達じゃん?」


「分かった。」


思わず返事をしてしまった。

その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。


「雪夏!」


苑香が何故か沢山の差し入れを持ってきた。


「大丈夫?」


「うん……、でも何で?」


「雪夏が佐藤先輩と歩いてるのを軽部先輩が見て。

それで佐藤先輩に連絡下さいって……軽部先輩が言ってくれたの。」


「え?

連絡したの?」


「雪夏が寝てから電話くれた。」


「そうなんだ。」


「だから朝御飯持ってきた!

佐藤先輩、何も無いって言うから……。」


苑香がキラキラした目で私を見てる。

何か起きた?って言いたそう……。


「苑香ちゃん、ごめんね。

入って。」


「はい。

お邪魔します。」


苑香が入って来るのをボーッと見ていた。


「雪夏の好きなミニパフェ買ってきたよ!」


「え?」


ミニパフェを私はよく買ってたけど、それは佐藤先輩の好物……。


「苑香ちゃん、それ、俺の好物。」


「え?」


「雪夏が差し入れしてくれてたんだ。」


「そうなの?」


苑香が驚いている。


「私もミニパフェ好きだけど、太るから食べてなかったの。」


「えぇー?

太ってないじゃん?」


「太らないようにしてたの。」


「はぁ……そうだよね、モテる男の隣にいると目立つし色々言われてたもんね?」


「コラコラ、この話はここでしないの!」


「あっ、ごめーん。」


佐藤先輩には色々言われてた事は言ってない。


「苑香ちゃん、色々ってなぁに?」


ちょっと佐藤先輩が気持ち悪い言い方をした。

こういう時はもう逃げられない。


「雪夏に聞いた方が……。」


「まぁ……そうか。

でも苑香ちゃんも嫌な思いさせちゃったでしょう?

ごめんね。」


「ううん、私は平気。

軽部先輩も助けてくれたし。」


「そっか。

じゃあ、軽部にありがとうって言っておくわ。」


ここで話が終わる……わけが無い。

明日が怖いな……。




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