第3章 第6話

今日は店の奥で発注の仕事をお手伝い。


「え?

桝本さんが邪魔って言った?」


「はい。」


「酷いな……それ。」


「どこにいても邪魔だから消えろブスって言われました。」


「マジですか……。

ブスじゃないのになぁ。」


「え?」


「ブスじゃないのにブスって、目が悪いのかな?」


「いやぁ、そういう事では……。」


店長がちょっとズレている。


「オババ……じゃないや、良子さんがね。」


「オババって言いましたね?」


「はい、言いました。

内緒にして下さい。」


「言いませんって。

それで良子さんがどうなさいました?」


「桝本可奈が雪夏ちゃんを攻撃するかもしれないから、出来るだけ離しておけって。」


「あぁ……そうだったんですね。」


「あの子、レジ速いし、助かるんだけどね。

でも人付き合いダメなんだよね。

御客様にクレーム入れられると逆ギレする。」


「ダメじゃないですか、それ。」


「だよね。

婿にバレたら怒られそう。」


「婿?」


「あぁ……婿に言わないでよ?」


「はい?

誰です?」


婿って言われても分からない。


「専務だよ。」


「あぁ……社長の娘の婿だからですか?」


「そう。

よく知ってるね!」


「本人から聞きましたので。」


「そうか。

社長の恩人なんだっけ?」


「そう思ってないですけどね。」


「社長に言うの?」


「言った方がいいです?」


「言わない方がいいです。」


何か店長なのに、店長らしくなくて笑える。

その時にレジからの電話。


「はい、店長です。」


「桝本さん、御客様と喧嘩してます。」


「え?」


店長と私が店内に走って行く。


「何で俺に酒が売れないんだよ!」


「売れません!」


「親父に頼まれたって言ってるだろ!」


御客様が怒っているけど、桝本さんも怒っている。


「ちょっと、どういう事?」


店長が優子さんに聞く。


「桝本さんの同級生がお酒買いに来たんです。」


「あぁ……それで売れないって言ってるのね?

分かった、話して来る。」


店長が御客様に近付いた。


「御客様。

未成年にお酒を購入するように頼んだ大人がいるとなると、その大人は警察に捕まってしまいますが、宜しいのでしょうか?」


「え?」


「お酒を売った側も罪になりますが、責任をとっていただけるのでしょうか?」


「は?」


「こうやって、犯罪の手助けしないって怒鳴られ、営業妨害された分はきちんと警察に通報してさせていただきます。」


「うるさいな、もう二度と買いに来ないわ!」


御客様は逃げるように帰って行った。


「桝本さん。」


「はい……。」


「こういう時はさっさと私を呼んで下さい。

喧嘩されては同僚も他の御客様も迷惑ですよ!」


「……。」


「意見があるなら言って下さい。」


「別に。」


桝本さんは絶対に謝ろうとしない。

これから先……嫌な予感しかしない。






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