第3章 第4話

今日は就職して初めての休み!


「こんにちは。」


「あっ、こんにちは。

今日は胡桃、学校なんだけど。」


「はい、分かっています。

普通にランチに来ました。」


「あら、ありがとう。」


私が休みの日に行きたくなるのは、やっぱりカフェ。

胡桃ママに会うのが久々に思えた。


「あれ?

雪夏ちゃん、今日は休み?」


軽部先輩がカフェに来た。


「あっ、軽部先輩!

苑香は?」


「苑香ちゃんは仕事。

付き合ってるからって、休みを同じにするって言えないもんね。」


軽部先輩は不満そうだ。


「軽部先輩、今日は?」


「夜勤明け。

苑香ちゃんは夜勤無いんだよね。」


「そうなんですか。」


「だから今週会えないんだよね。」


「寂しいですね。」


「そうだね。

でもさ、仕事で疲れてると、寂しさより眠気が勝つんだよ。」


「そうですかね?」


「俺、おごるからさ、一緒にメシ食おうよ。」


「え?

良いんですか?」


「だって初給料まだでしょ?」


「はい……。」


軽部先輩の言葉に甘えて、一緒にランチ。

今日はグラタンとスープのセットを注文した。

すぐにバイトの人が運んで来てくれた。


「苑香に怒られませんか?

彼女以外とランチって。」


「雪夏ちゃんに会って無視する方が怒られるよ。」


「そうなんですか?」


「うん。

でも俺、モテないからなぁ。

一緒にランチしてくれるの、真綾と雪夏ちゃんくらいでしょ。

でも真綾、妊婦だからさ。」


「この前の……あれ、やっぱり妊娠してたんですね?」


「うん。

秋ぐらいに生まれるとか言ってたよ。

でもなぁ、実家に残るなんて思わなかったよ。」


「そうなんですか?」


「うん。

でも残りたくなったんだろうな。

旦那のおかげで。」


「そうですかね?」


「本気で付き合った彼氏がアレだったから、近くで癒してくれた人を好きになっちゃったんだろうな。

前からいいなって思ってたらしいけど。」


「そうなんですか?」


「うん。

どっちにしろ幸せそうだからいいや。」


「そうですね。」


私も嬉しい。


「そっちは仕事どうなの?」


「楽しいけど、大変です。」


「楽しいだけ良いだろう?

苑香ちゃんなんて漢字分からなくて怒られてるぞ。」


「あぁ……。」


苑香は漢字が苦手で字もあまり上手ではない……。


「何か独特の字を書くんだよな。」


「確かに。」


「俺も癖字だから何も言えないけど。」


「そうなんですか……。」


「拓哉は何かヒョロヒョロした字だよな。」


「縦長ですよね。

線も細いって言うか。」


勉強を教わった時に佐藤先輩の字を見た事がある。


「何かさ、学生時代戻りたいな。」


「え?」


「もっと皆とこんなふうに話せば良かったよ。

最近、苑香ちゃんは眉間にシワ寄せててさ。

仕事中、変なオーラ出してる。」


「大丈夫ですか?」


「パソコン使った事が無いから苦戦してるみたい。

拓哉がたまに教えてるみたい。」


「そうなんですか?」


「うん。

苑香が言うには元気無いって。」


「そうですか……。」


「何か美味いメシ食ってるのに、あんまり良い話が無くて悪いね。」


「いえ、良い話が無い時こそ、ホッコリする御飯ですよ!」


「だよな。

もう何でこんな良い人を繋ぎ止めないかなぁ……。

拓哉、ほーんと意味分からん。」


「私も分からんです!」


軽部先輩と話すのが凄いラク。

楽しい!

近所の頼れる兄貴みたいだ。

いっぱい話せて、明日からも頑張れそう。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る