第3章 第1話

今日から……社会人!

春休みは、私だけ暇で皆は忙しかった。

苑香は研修。

胡桃と秋奈は入学準備。

私も研修があれば良かったな。

でも今日はもう入社式。

はりきって早く本社に来てしまった……。


「おはようございます、小豆沢さん。」


「おはようございます。

土田さん……えっと、お義父様はあの後大丈夫でしたか?」


「はい。

御世話になりました。

あれ以来、健康に気を付けると言っていますが……。」


「言ってるだけ……ですかね?」


「お察しの通りですよ。

本日より、小豆沢さんは我が社の社員なんですよね。」


「ありがたいです。

採用して下さって、ありがとうございました。」


「いえ、我が社を選んで下さってありがとうございます。」


「あっ、本当にこちらこそです。」


土田さん……の義理の息子さんに挨拶された。


「一つ伺って宜しいでしょうか?」


「はい。」


「レモネード、どうでしたか?」


「あぁ……あれはですね、美味しかったんですけど、凍らせられないですよね?」


「はい……。」


「凍らして学校に持って行きたい時って、どうしたらいいんですかね?」


「えっと……。」


「夏とか塩レモネードとか作ってしまうんですか?」


「え?」


「美味しくないですかね?

塩レモネード?

あれ?

塩レモネード凍らせたら、溶けにくいとかあります?」


「あの……。」


「あっ、すみません。

つい……。」


「いえ。

参考になりますよ。

ありがとうございます。」


「はい。」


「そろそろ、御時間ですね。

義父も来ました。」


私の後ろに土田さんが立っていた。


「小豆沢さん、おはよう!」


「おはようございます。

ん?

え?

代表取締役社長……って?」


土田さんの名札に『代表取締役社長』と書いてあった。


「あっ、私ね、今日から社長。

ちなみに副社長は娘。

そんで、こっちの婿さんは専務ね。」


「え?

す、すみません。

そんな偉い人って知らずにオジサンとか……。」


「いいよ、オジサンで。

でも会社だと面倒な事になるからね。

社長、副社長、専務って呼ぶんだよ。

道端ではオジサンでいいから。

道端で社長って言われたら目立っちゃうし。」


「はい。

ありがとうございます、社長!」


あのオジサンが社長になるとは思わなかった。

私はあのオジサンの会社で働けるなんて嬉しい。

でもオジサンと仲良しだからコネで入ったとは思われたくない。


「それでは入社式を始めます。」


面接した部屋で入社式が始まった。

新入社員は五人。


「皆さん、おはようございます。

本日より代表取締役社長になりました、土田喜信つちだよしのぶです。

祖父が他界し、父が会長になり、私が社長になりました。

って、別にどうでもいいよね、こんな話。」


どうでもいいと言えないけど、クスッと笑ってしまった。


「個々に今後の予定表を配るので、質問はその時にお願いします。

以上です。」


社長の話があっさり終わった。

その後、知らない社員が来て、予定表を渡された。


「質問はありますか?

……無いようなので、以上です。

今日はこのまま帰宅して下さい。」


明日から私は高校の近くの店舗で研修。

散々行っているから、店の雰囲気も分かって安心。







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