第2章 第49話
今日は卒業式。
秋奈の入試の結果はまだ出ていない
「あぁ……体育館寒いよね?」
「寒いのにミニスカートじゃないの。
ジャージはどうしたの?」
「卒業式にジャージなんておかしいでしょ?」
「寒いなら防寒しないと風邪ひくわよ?」
「そーんなの、秋奈が一発で効く風邪薬作ってくれたら、それでいいじゃん?」
「そうね。
でも大学入って4年、大学院で2年。
私は6年後にやっと製薬業に携われるかどうかなのよ?」
「え?
大学院?」
「そうよ。
研究をいっぱいさせてもらって、旅立ちたいものね。」
秋奈の話を苑香がビックリしたような表情で聞いている。
「私は食器の汚れが落ちやすい洗剤作って欲しいな。」
胡桃がボソッと呟いた。
「そんなのいっぱいあるでしょう?」
「あるよ。
でも手が荒れるの。」
「それって、洗剤を改良するのがいいか、ハンドクリームを改良するのがいいか……。
私の分野なら、ハンドクリームよね。
塗り薬とか作るの楽しそう。」
胡桃の手を見ると荒れている。
言わないけど、悩みだったのかもしれない。
「良いハンドクリームあったら紹介するね!」
「あっ、そうか。
雪夏、ドラッグストアの人になるんだもんね。」
「うん、是非御利用下さい。」
「頼まれなくても行くよ!」
私は薬を作れないけど、オススメくらいなら出来るかな?
「早く体育館に行きなさい!」
先生に怒られた。
私は教室から体育館へ向かう。
卒業式と言っても特別な事は無い。
体育館のあちこちで泣き声はするのだけど、私は泣いていない。
とにかく寒すぎて、早く終われ!と思っていた。
「はぁ……やっと終わった。」
卒業式が終わって、体育館から教室に戻る。
「もう、今日で学校とお別れか。」
「苑香はね。」
「あぁ……。」
苑香の言う通り、私と胡桃と苑香は最後。
秋奈はまだ来ないと行けない。
「お別れって泣いてるでしょう?
でも私はまだ来るのよ。
卒業したのに制服で来るの。
片付けられやしない。」
秋奈が不満そうだ。
「制服もう少し着たかったな。」
「私は嫌よ!」
「そうなの?
可愛いのにな。」
苑香は制服好きで、秋奈は制服が嫌い。
卒業式でも、二人は噛み合ってない。
でも仲がいいなぁ……。
「最後に皆で写真撮ろう!」
「うん!」
担任に頼んで、写真を撮ってもらった。
「ちょっと、秋奈だけ怒ってるみたいじゃん?」
「そうかしら?」
「怒ってないでしょ?」
「何か……違う方見てる?」
最後まで何かグダグダだけど、この教室で毎日皆と過ごせて良かったよ。
ありがとう。
またね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます