第2章 第48話

とうとう学校が自由登校になった。

私は今日もカフェにいる。


「本当に暇そうね。」


秋奈が参考書を読みながら話しかけて来る。


「ごめん、でも本当に暇。」


「でしょうね。」


「勉強の邪魔だよね?」


「ううん。

本当はもう勉強する事なんてないのよ。」


「え?」


「忘れてたらいけないって思って復習してるのよ。」


「へぇー……。」


私は復習なんてした事が無い。


「あーきなっ!」


「あっ、苑香。」


「これ、軽部先輩から。」


「え?」


苑香が秋奈に何かを渡した。


「これ……あの売り切れ続出の限定御守りじゃないの!」


「うん、夜勤の仕事終わって、朝に並んだみたい。」


「私の為に……。

友達の彼や、友達の親まで気を遣ってくれるなんて……。」


秋奈が泣き出した。


「え?

何、どうした?」


たまたま近くの席にお皿を取りに来た胡桃が驚いて声をかけて来た。


「ちょっとぉ、泣かないでよ。」


苑香がもらい泣きしている。

胡桃がとっさに箱ティッシュを私に渡したから、私は泣いている二人にティッシュを配る。


「ほらぁ、泣かないでよ。」


「ごめん、本当に。」


「謝る事じゃないよ。」


「うん、ありがとう。」


秋奈は苑香みたいな人は苦手って言ってた事があったのに、随分と仲良くなってくれて嬉しい。


「軽部先輩さぁ、佐藤先輩にもこの御守りあげようとしたけど、寝坊しちゃったんだって。

それを凄い後悔してて、彼女の大事な友達こそ合格して欲しいって。」


「そうなんだ。

本当、前から周りをよく見てる人だもんね。」


「うん。」


苑香が嬉しそうに軽部先輩について話している。


「私、プレッシャーかけられた事がないんだけど。

今回ばかりはプレッシャー凄いわね。」


秋奈が頭を抱える。


「そんなことないよ。

落ちたら落ちた時に考えればいいじゃん?」


苑香がそう言うと、


「こらこら、落ちるとか言わない!」


胡桃が苑香の頭を軽くグーで叩いた。


「あっ、そうか。

ごめんごめん!

マジで秋奈、ごめん!」


「いいの。

気にしないで。」


「あぁ……軽部先輩にバレたら怒られる。」


「誰も言わないわよ。」


「そう?」


「聞かれなければね?」


「え?!」


困ってる苑香を秋奈がからかう。

胡桃は店の手伝いを続けつつ、チラチラ見て笑ってる。


「ところで、この厚いカツサンドは?」


秋奈の前にカツサンドがあった。

ビックリするくらいカツが厚い。


「胡桃パパが作ってくれたの。

勿体ないから少しずつ食べてるの。」


秋奈は嬉しそうに言う。


「秋奈、明日本番でしょ?」


「うん。」


「頑張って。」


「ありがとう。」


秋奈の大学入試。

私が受験するんじゃないのにドキドキする。




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