第2章 第40話

「あのキレイなのは何?」


秋奈が何かに興味を持っている。


「あぁ、チョコバナナじゃん!

美味しいよね?」


「ん?」


「チョコバナナ、食べた事はない?」


「チョコソースのかかったバナナはあるけど……。」


「え?

マジで?

食べようよ、私、あれ大好き!」


苑香が秋奈の手を引っ張って、チョコバナナを買いに行く。


「ほーんと、苑香、いっつもチョコバナナ買うから。」


「そうなの?」


「少なくとも小中学校の時は毎年チョコバナナ買ってたわ。

高校になってから、クラス違ったりしてて、疎遠だったから分からないけど。」


「そうなんだ。」


胡桃は穏やかな表情で苑香を見てる。


「それにしても秋奈はチョコバナナ知らないんだね……。」


「うん……。

こういうお祭り、初めてかも。

お祭りより勉強って子だから。」


「あぁ……そうかそうか。

でも凄い幸せそうに見つめてるよ?」


「アハハ、本当だ!」


苑香と秋奈はチョコバナナを買って、戻ってきた。


「はい、胡桃と雪夏の分。」


「ありがとう!」


チョコバナナを食べながら歩く。


「秋奈、どうよ?」


「うん……、美味しい……。」


「何でそんな泣きそうなのよ?」


「こういうの初めてで……。

ちょっと感慨深いというか……。」


「アハハ、また来年以降に来ればいいじゃん?

誘うから時間作ってよ?」


「いいの?」


「良いに決まってるじゃん!

音信不通とかやめてよ?」


「うん、分かった。」


秋奈が照れくさそうに返事をしている。

何か凄く可愛い。


「あの……。」


「ん?」


「私、あれが欲しい。

でも高校生じゃ、恥ずかしいかな?」


「え?

ヨーヨー釣り?

私も好きだよ!

一緒に行こう!」


苑香と秋奈がヨーヨー釣りにチャレンジするらしい。


「雪夏。」


「ん?」


「苑香、ヨーヨー釣りで釣れた事無いよ。」


「え?」


「秋奈は?」


「分からない……。」


私と胡桃は、少し離れて様子を見ていた。


「あーっ、釣れないじゃん!」


「え?」


「ちょっと、秋奈、上手すぎ!

何個釣るのよ?」


「四人で来たから四個?

最高記録は十個なんだけど、兄に止められたわ。」


「そうなの?」


「祖父母の家の近くの盆踊りで毎年やってたの。

田舎だから、チョコバナナなんてお洒落な物は無かったけど。」


「へぇー……。

って、もう四個じゃん!」


「うん。

このくらいにしておくわ。」


苑香の開いた口が塞がらない。

秋奈は無表情だった。


「雪夏も胡桃もこれ。」


「ありがとう……。」


全員でヨーヨーをパシャパシャさせながら歩く。

その音が心地好いお祭りだった。

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