第2章 第34話
とうとう……採用試験当日。
私は学校へ行かず、試験会場に向かう。
私の受ける会社は筆記試験は無くて、面接だけらしい。
「あの、どうかなさいました?」
会社の近くの公園の入口で座り込んでいる人がいた。
「大丈夫ですか?
どうしました?
ちょっと、歩けますか?
そこのベンチ、日影なので動きましょうか?」
座り込んでいたのは親よりちょっと年上っぽいオジサンだった。
「あっ、これ飲みます?
そこのドラッグストアで買ったんです!
冷えてるし、口をつけていませんよ。
どうぞ!」
オジサンにスポーツドリンクを渡した。
オジサンはグビグビ飲んでいる。
「あと、これ、冷却シートです。
首とかオデコ、冷やしたら気持ちいいですよ。」
「ありがとう……。」
オジサンが冷却シートをオデコに貼ろうとしているから手伝った。
顔が赤くて心配……。
「あまり具合悪いなら救急車呼びますよ。」
「いや、すぐそこの会社に家族がいるから……。」
「そこって、ドラッグストアの?」
「はい……。」
「私、そこに用事があって来たんです。」
「学生さんが会社に?
店舗の方じゃなくて?」
「はい。
会社の中って、きっと涼しいので、歩けるなら行きましょうか?」
「うん……ありがとう……。」
私はオジサンを支えて、一緒に歩いた。
「あの、お名前教えてもらえますか?
家族、呼んでもらえるように言いますので。」
「
「分かりました。」
私は土田さんを連れて、会社に入ると、若い男性社員がいた。
「すみません、土田さんの家族を呼んでいただけますか?」
「え?
あぁ……土田さん、すぐそこにいるので私が連れて行きますね。」
「宜しくお願いします。
あと、面接会場はどこですか?」
「え?
あぁ……二階です。」
「ありがとうございます。」
私は土田さんを社員に任せて、二階へ向かった。
二階の受付にはキレイな女性がいた。
「遅れて、すみません。
小豆沢雪夏です。」
「面接に遅れるなら連絡していただかないと……。」
「申し訳ありません。」
「どうして遅刻したの?」
「私の不注意です。
本当に申し訳ありません。」
深く深く頭を下げた。
その時、さっき一階にいた社員がやって来た。
「このまま面接しても、遅刻という事実は消せないよ。
凄く不利だと思う。
それでも面接を受けたい?」
そう言われても引き下がりたくない。
「はい、受けたいです。
受けさせて下さい。」
「分かりました。
それでは一番最後に面接でも良いですか?
もう、貴女の面接予定時間過ぎていますので。」
「はい、最後で良いので宜しくお願いします!」
多分、私は不採用だと思う。
でも、面接をしないで帰るのは絶対に嫌だ。
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