第2章 第33話
文化祭が終わり、私と苑香は採用試験が間近となった。
「どうしよう?!」
苑香が頭を抱えている。
「え?
どうした?」
「社内恋愛禁止だったら、どうしよう?!」
「あぁ……。」
苑香は軽部先輩の会社の採用試験を受ける。
「採用決まってから悩んだら?」
秋奈が冷たく言う……。
「冷たいなぁ……。」
「だって別の所を受けられないわよ?
不採用ならいいけど。」
「不採用は嫌……。」
「そうね、仮に採用面接を軽部先輩の上司がしていたとして、不採用にする。
向こうは苑香を忘れてるかもしれない。
でも苑香が覚えているかも?
なーんて事もあるかも。」
「あぁ……無理無理。
別の会社にすれば良かった!」
「具合悪いって休んだ所で延期されるだけかもしれないし、真面目に受けてみたら?」
「はぁ……そうだよね……。」
苑香は幸せそうだけど、それはそれで悩みがあるんだなぁ……。
私もそうだった……って、思い出すのが切ない。
「何か緊張する!
採用でも不採用でも悩む!」
「それ、軽部先輩に話せないの?」
「話せるわけないじゃん。」
「そっか。」
本当は隠さない方がいいって言いたかった。
でも……話せない気持ちも話して欲しい気持ちも分かるから、言葉が出なかった。
「何か、皆の進路が決まるのは嬉しいけど、それって卒業に近付くよね。」
秋奈が言う。
「そうだね。」
「寂しいわ。」
「離れても友達だよ?」
「うん、分かってる。
でもこんなに波乱万丈で充実してる日々は初めてだから続いて欲しいのよ。」
「波乱万丈で充実?」
「うん。
色んな事が起きるけど、一日一日、勉強以外もギューっと詰まってるわ。」
「確かに詰まってるね。」
ほーんと、いっぱい詰まってる。
沢山笑って、沢山泣いて、沢山話して。
「採用決まったら、軽部先輩がドライブ連れてってくれるんだって。」
「へぇー、いいね!」
苑香がニヤニヤしている。
「でもさ、軽部先輩にフラれたのに、何で告白されたのかしら?」
秋奈が不思議そうにしている。
「あぁ……それね。
聞いたら、真綾ちゃんの事で色々話したりしている内に、何か思っていたのと違うなって気づいたんだって。」
「思っていたのと違う?」
「うん。
先輩が私に相談したいとか思って連絡くれてて、妹分だったはずが、もっと身近な存在に思えたみたい。」
「いいじゃん、それ。」
「うん。
でもね、相談されても答えが出ない問題もあるから。」
「そうなの?」
「うん。
佐藤先輩の事とか……。
でも雪夏を責めてるとかじゃないんだよ?」
「……。」
「何か別人みたいに遊んじゃってて。
そんなんでいいのかな?みたいな。」
「……。」
「ごめん、雪夏は気にしないで。」
「うん……。」
遊んじゃってるのは知ってる。
でも私はそんなふうになってる佐藤先輩が、もし私との別れを言い訳にするなら、言葉が出ない。
じゃあ、よりを戻そう……なんて言えない。
でも苑香や軽部先輩に心配かけるのは、やめて欲しい。
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