第2章 第27話

あっと言う間に始業式。


「文化祭、うちのクラスはどうしますか?」


先生がボソッと言った。

文化祭が控えていたんだった。


「文化祭どころじゃないよね、来月専門学校入試だし。」


胡桃が不機嫌そうに言う。


「マジかぁ。

テストは?」


「面接だけっぽい。」


「え?

勉強いらない?」


「だってカフェとかパティシエ関連の学校だもん。

だからこそ何を聞かれるか分からないけど、志望理由とか?

何か直前に面接の練習あるって。」


「そうなんだ。」


進学する人達のスケジュールは知らなかった。


「苑香はどうするの?」


「何かさ、軽部先輩の会社の事務員を募集してるんだよね。」


「そこ受けるの?」


「うん。

もう先生にも言った。」


「え?」


「補講来てる時にね。

雪夏はどうするの?」


私はドラッグストアの求人を二社見つけていた。


「一応、先生に相談して、今日決める予定だから。」


「そうなんだ。」


私は全国チェーンとローカルチェーンで迷っていた。

でも全国チェーンで遠くに転勤するのは困るからローカルチェーンにしようと思う。


「はぁ……大学入試も早ければいいのに。

皆、さっさと決まって、私は最後よ。」


秋奈がボヤく。


「大学って三月に決まるんだっけ?」


私はうろ覚えだから聞いてみた。


「うん。

私は理系受けるのに文系にいるから、一般で受けるのよ。

推薦貰って面接したって、何で文系クラスにいるのに理系受ける?って言われて面倒じゃない?」


「まぁ……良い印象じゃないかも?」


「どうにかするわよ、ちゃんと勉強してあるんだから。」


秋奈なら、きっと平気。

絶対大丈夫とは言えないけど。


「それより、就職組は文化祭の後に就職試験よね?」


「うん。

面接練習とかするみたい。」


「そうかぁ。

じゃあ、就職組は一足先に頑張って!」


「うん!」


もう文化祭の話が頭に入って来ない。


「うちのクラスは休憩所に決定しました。」


そう先生が言うのが聞こえた。

知らない内に休憩所に決まっていた。

休憩所と言っても、だいたいクラスの皆がダラダラ過ごしているんだと思う。


「うちのクラスはヤル気無いわよね。」


またまた秋奈がボヤく。


「秋奈、何かやりたいの?」


胡桃が不思議そうに聞く。


「やりたくないわよ。

でも休憩所なら勉強が出来るわよね。」


「文化祭なのに勉強?

一緒に体育館行きたかったのに。」


「文化祭で体育館なんて行った事が無いわ。

面白いの?」


「面白いよ。

友達が演劇部や軽音部にいるから、毎年体育館は欠かせない!」


「そうなんだ。

私もそこへ?」


「イヤじゃなければ……。」


「イヤじゃないのよ。

初めての事だから、よく分かっていないだけよ。」


ちょっと秋奈が恥ずかしそうにしているのが、何だか可笑しかった。









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