第2章 第21話
「すみません。
彼女、悪気ないんですけど。」
「彼女みたいな人がいないと、僕は前に進めないのかも。」
「進めなくても、いつか進めたら良いと思いますよ。」
「そうですよね。」
男性はちょっとだけホッとしているように見える。
そこに胡桃がやって来た。
「何か苑香が手伝い代わるから向こうで話して来てって言うんだけど……。」
そう言いながら胡桃が私の隣に座った。
「あれ、御客様も一緒に?
何か問題でもありました?」
「あっ、お忙しい所すみません。
問題無いんです……。」
「え?」
男性は困ったような表情をしている。
「胡桃、この御客様誰か知ってる?」
「ヤスダさんでしょう?
たまにテイクアウト予約して下さるの。」
「そうなんだ。」
ダメだ、話が続かないかも……。
そう思った時に苑香が来た。
「一段落したから、ゆっくりしててって胡桃パパが言ってた。」
苑香が戻って来て助かった。
「あっ、私、ここに座っていいです?」
「は、はい、勿論!」
苑香がヤスダさんの隣に座った。
「それで、お兄さん、話したの?」
「え?
ま、まだです……。」
「ちゃんと言わなきゃダメじゃん、付き合って下さいって。」
「いや、まだ、いきなりそんな……。」
「え?
違うの?
お友達でいいの?
さっき、彼氏がとか言いませんでした?」
「言いましたけど……いつか、夢と言いますか。」
「ふーん、そっか。
胡桃、どうする?」
苑香がいきなり胡桃に話をふったものだから、胡桃がキョトンとしている。
「ごめん、意味が分からない。」
「だから……こういうの自分で言った方がいいよね。
カウンター空いてるから、私と雪夏はカウンターにいるよ。
二人で話してみて。」
「え?
ちょっと、え?」
苑香は私を連れてカウンターに行く。
胡桃とヤスダさんは何やら話しているように見えた。
「ヤスダ君、胡桃の事が好きだよね?」
胡桃のパパが話しかけて来た。
「え?
胡桃パパ、知ってるの?」
「常連さんだし、店が暇な時に話したりするよ。」
「そうなんだ。
親としてはどう思う感じ?」
「まぁ、経営学部の学生さんだし、跡継ぎ候補としては良いよね。
勉強熱心だから、コーヒーにも詳しいし。」
「それって、もしも付き合うなら許すの?」
「勿論。
胡桃の選んだ人の事を反対しないよ。
ただ意見を聞かれたら言うけど。」
「胡桃パパ、いいお父さんだね!」
「ハハハ、娘もそう思ってくれたらいいんだけどね。」
「思ってるよ?
嫌なパパの店をこんなに真面目に手伝わないから!」
「そうかな?
嬉しいな。」
苑香が胡桃のパパと話してる間に、ヤスダさんと胡桃の話は終わったらしい。
ヤスダさんが私達に近付いて来る。
「ありがとうございました。」
「話せました?」
「はい。
そろそろ、失礼します。」
「うん、ごちそうさまでした。」
「いえいえ、こちらこそお世話になりました。」
ヤスダさんが会計を済ませて帰って行く。
ちょっとだけ背筋がピンと伸びたように見えた。
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