第2章 第15話

とうとう、終業式。

明日から夏休みだ。


「さーて、帰ろうか。」


通知表を渡された私達は、帰りにショッピングモールでも行こうかと約束していた。

相変わらず、苑香は私と口を聞こうともしないし、秋奈や胡桃とも挨拶位しかしていない。

だから、私達というのは三人で……という事。


「三人ってさぁ、ちょっと面倒ね。」


「そうだね、三人で並んで歩くと邪魔な感じ?」


胡桃と秋奈が話している。


「ごめん……。」


私は謝るしか無かった。

でも私に対して嫌味にも聞こえた。


「まぁ……雪夏は悪くないよ。」


「うん、そうだよ。」


悪くないって言ってくれるのは嬉しいけど、何だかなぁと思った。

こんな気持ちなら先に帰った方がいいかな?と思いながら歩いて、校門の前に辿り着くと、真綾さんが立っていた。


「雪夏ちゃん!」


真綾さんが私に声をかけた。


「今日、これから良いかな?」


「ちょっと無理です。

すみません……。」


「もしかして、お友達と三人で?」


「あ……そうです……。」


「じゃあ、三人でおいでよ。

そこに車待ってるから。」


私はどうしたら良いか分からなかった。


「いいんじゃない?

一緒に行ってみれば?」


秋奈がそう言った。


「そうだね、行こう!」


胡桃が私の腕を掴んだ。

私達は言われるがまま、車に乗ろうとする。


「あっ、雪夏ちゃんは助手席ね。」


「え?」


「ほらほら早く!」


「はい……。」


私達は助手席に押し込まれるように乗った。

運転席には……佐藤先輩がいる。


「そんな怖い顔して見るなよ……。」


「え?

怖くなんか……。」


話し始めると同時に車が走り出す。

真綾さんと胡桃と秋奈は狭そうに後部座席に座っている。


「雪夏、苑香ちゃんと喧嘩したの?」


「え?」


「喧嘩?」


「いやぁ……そういうんじゃなくて。」


「じゃあ、何?」


「言いたくない。」


「俺も絡んでるよな?

それ?」


「え?」


「どうして別れたの?

未練は無いの?

みたいな事を言われたんだろう?」


「……。」


「思ってる事も言わないで、しつこいとか、うるさいとか言ったんじゃないの?」


「……。」


私は言葉が出ない。

自分でも分からない。

泣きそうになる。


「お前が嘘を言ってる時の癖を苑香ちゃんは知ってるよ?」


「え?」


「だから、しつこく本音を聞こうとしちゃったみたいだよ。

実は、苑香ちゃんが死にそうな顔で歩いてるの何度も見て、みーんな心配しちゃってさ。

軽部が自分のせいかと思って聞いたけど違うって分かって。」


「……。」


「ちゃんと話し合った方がいい。

胡桃ちゃんも秋奈ちゃんも心配してるから。」


「……。」


もしかして、胡桃と秋奈はグルだったの?


「胡桃ちゃんと秋奈ちゃんから私が様子を聞いたのよ。

だから、グルとかじゃないよ?」


私の心を見透かすように真綾さんが言った。


「これから行くファミレスに軽部と苑香ちゃんいるから。

逃げんなよ?

マジで逃げたら許さないからな?!」


佐藤先輩の言い方が怖い。

こういう言い方は本当に怒ってる時。

多分、私達二人の問題なら怒らない。

胡桃や秋奈を巻き込んでいるからだ。

でも、いきなり謝るなんて違うし、どうしたら……。








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