第2章 第10話

後日、真綾さんは……本気でキレた。


「もうね、何から何まで説明したらいいか……。」


苑香が頭を抱えてる。


「どうした?」


「真綾ちゃんが蹴りを入れたら、あの人が気を失ってね……。」


「え?」


「組の人がどこかに連れてった。

どこだと思う?」


「分からない……。」


「だよねー、どっか沈められるかな?」


「それはマズイでしょ。」


「そうね、多分県内にいられないんじゃない?」


「え?」


「円満解決するなら、引越みたいな?」


「え?」


引越なんて簡単に出来ないような。


「真綾ちゃんを怒らせた人は皆いなくなるんだよ。

わりと気が長い人なのに。」


「そうなんだ?」


「それより、軽部先輩の代わりに佐藤先輩が来たのよ。」


「ふーん。」


「わざとか分からないけど、彼女出来たって言ってた 。」


「へぇー。」


「いいの?

本当に……。」


「いいよ、別に。

浮気や不倫じゃないもん。」


「そうだけどさ……。」


だって、もう別れたから、相手に彼女が出来ても文句なんて言えない。

別れたいって言ったのは私だから。


「やっぱりさぁ、私に言うのは雪夏に言って欲しいからじゃないの?」


「そうかもね。」


「平気?」


「うん、大丈夫よ。」


こうなると思ってた。

だから……私もそうやって新しい相手を見つけたら良いと思う!


「真綾ちゃんが言うには、誰でもオーケーしちゃいそうだって。

辛すぎて忘れられないから、忘れられる相手を探してるのかも?」


「良い人が見つかったらいいよ。

そうでないと、私のせいにされちゃう。」


「それは違うよ。

自分に自信が無くなるだけだって。

今もそうかもだよ?」


「私だって自信無いよ。

だって何も知らないもん。」


「そうだけどさ。

後悔しても知らないよ?」


「しないって。

何か、しつこいよ?」


「しつこい……って。

もういい、もう言わない!」


「うん、言わないで!」


苑香が心配してくれてるのは分かってる。

だけど、古い傷をえぐられるような感覚が辛い。

辛いの知ってて、やってるの?

そう思っちゃう。

何かマイナス思考にしかなれない私がいる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る