第2章 第9話

やっぱり、真綾さんが黙っていなかった。


「真綾ちゃんから連絡来たけどさ……。」


苑香が暗い表情をしている。


「どうなの?」


「半殺しだって。」


「え?」


「真綾ちゃん、組の人達より強いんだよね。」


「え?」


「色んな格闘技を護身術の一部としてやってたの。

見た目は超美人なのにね。」


「そ……そうなんだ。」


「まぁ……ヤバいよね。

お嬢様の手を汚すわけに行きませんみたいな?」


「あぁ……組の人?」


「うん。

とりあえず、一緒にいられたら止めるんだけど。

昔、男子に髪を引っ張られてキレて、ボッコボコにしてたからなぁ。

強いって知らなくて、止めなかったら、男子が入院しちゃったわ。」


「はぁ……そうでしたか。」


真綾さんは恐ろしいかもしれない。


「内田先生も真綾ちゃん知ってるから、軽部先輩に止めろって言ったみたいよ?」


「え?

そうなんだ?」


「はぁ……もう連絡しないつもりだったのになぁ。」


「あぁ……。」


苑香は失恋したんだった……。

なのに、こんな事になって。


「軽部先輩、変わらないんだもん、辛いわ。

やっぱ、好きじゃん。」


苑香が寂しそうに見える。


「そういえばさぁ、佐藤先輩、就職したらしいよ?」


「え?」


「軽部先輩の会社と同じ会社で、別の事業所みたい。」


「へぇー……。」


「もうどうでもいい?って思ったけど、でも軽部先輩が雪夏に伝えてって言ってた。」


「そうなんだ。」


「佐藤先輩モテるから、狙ってる人が多いらしいよ。

本当にいいの?」


「え?」


「やり直したいとかないの?

話し合えば、どうにかならない?」


「ならないよ。

話し合えないから、こうなったんだもん。」


「だよね……ごめん。」


「ううん、気にしないで。」


私は佐藤先輩が就職したって聞いて、ほっとした。

それが本音っていうヤツだと思う。

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