第2章 第7話
「はぁ……。」
生徒指導室に着いた軽部先輩はため息を吐いた。
「苑香ちゃん、俺がいたら気まずいかな?」
「そりゃ、多少は……。」
「だよな……帰っちゃダメかな?」
「ダメでしょう?」
逃げ出しそうな軽部先輩を引きとめる。
そのすぐ後に、
「待たせたな。」
内田先生が生徒指導室に入ってきた。
「もうすぐ、栗田と水石来るから。」
「栗田さんの親は?」
「帰ってもらった。
お父さんはこれから仕事って言うから。」
「そうなんだ。」
苑香の親は帰った。
それを聞いて、何故か軽部先輩はホッとしている。
「雪夏!」
苑香が私を見て、飛びかかるように抱きついて来た。
「ちょっと、苑香。
皆が見てるよ。」
「平気平気……。
って、えぇーっ?!」
苑香が軽部先輩に気付いて私から離れた。
「何で先輩が?」
「胡桃の彼氏を追い払ってくれたの。」
「え?
何で?」
「たまたま通りがかって。」
「でもどうして?」
「胡桃の彼氏、軽部先輩の知り合いの彼氏なんだって。」
「え?
ど……どういう事?」
苑香がキョトンとしている。
「もしかして、細身でキレイな黒髪の女子の事ですか?」
胡桃が軽部先輩に向かって言った。
「え?
知ってるの?」
「一緒に歩いてるのを見たので聞いたら、親戚の姉ちゃんだって言ってました。」
「マジか……。」
「髪を撫でたりもしてて、あやしくて。」
「そうなんだ?」
「それ以来、ちょっと距離を置こうとしたけど、それを私の浮気って思われて……。」
「浮気じゃないだろ。
アイツが浮気してるんだよ。」
「ですよね……。
何かもう二度と会いたくないです。」
「アイツから会いに来る事は無いよ。」
何でそこまでハッキリ言うんだろう?
「ねぇ、苑香ちゃんなら分かるよね?
真綾の事。」
「はい……。」
軽部先輩に話をふられた苑香が苦笑している。
「苑香、どういう事?」
「うちの近くの豪邸の娘なのよ。」
「え?」
「彼女の父親は、うちの親の先輩で、組長なの。」
「それって……。」
「まぁ……言えないお仕事?」
「あぁ……。」
もう言葉が出なかった。
「軽部、この子達は心配なく生活出来るって事か?」
内田先生は少し不安そうだ。
「平気です。
平気なようにしてもらいましょう。」
「そうなの?」
「まぁ、何ならうちの親にも言います。」
「そうか。
じゃあ、生徒達は教室に戻していいか?」
「戻してやって。
この子達は悪くないから。」
「分かった。
皆、教室に戻っていいぞ。」
私と苑香と胡桃は生徒指導室から出された。
私達はもっと話を聞きたかったけど、教室に戻った。
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