第2章 第6話

「あっ……、先生……。」


軽部先輩を呼び止めたのは、内田うちだ先生だった。


「お前、朝から高校生突き飛ばして、何やってんの?」


「アイツが二股……いや三股か?

あれ、もっとか?」


「何股だろうが手を出すなよ。」


「まぁ、そうだけどさ。」


軽部先輩は面倒くさそうにしてる。

そして、内田先生は私に向かって、


「小豆沢、アイツが水石の彼氏?」


そう言った。


「え?

先生、何で……。」


「栗田の親から連絡来て、事情は聞いた。

栗田も水石も送って来るって事だから、小豆沢と軽部は生徒指導室で待ってろ。」


生徒じゃない軽部先輩まで生徒指導室に呼ばれる。


「えーっ!

俺も?

もう生徒じゃないし!」


「生徒に関わっただろうが!」


「あぁ……そういう事か。

俺、これから寝たいんだけど。」


「朝だぞ?」


「夜勤明けなんだよ。

ちょっと眠いから眠気さまそうと思って、コーヒー買ったのに温くなっちゃって。」


「分かった分かった。

あとでこっそりコーヒー飲ませてやるから。」


「マジで?」


「嘘吐いても仕方ないだろ?」


「それもそうだけどさ。」


軽部先輩はちょっと嬉しそう。


「小豆沢と軽部は先に行っててくれ。」


「はーい。」


軽部先輩は面倒くさそうに返事をすると、私をチラっと見た。


「行くぞ。」


「はい。」


「俺は来客用の所から行かないとマズイけど、雪夏ちゃんは?」


「私が靴を履き替えたら、そっち行きます。」


「おう。

ゆっくりでいいよ。」


ゆっくりでいいよって言われても、あまりゆっくりしていられない。

靴を履き替えてから、廊下を急いで歩く。

待たせても悪いしなぁ……と思っていた。

そして、来客用の玄関に着いても、軽部先輩はいなかった。


「雪夏ちゃーん!」


どこかから声がする。

声のする方を見たら、事務室だった。

その室内に軽部先輩が見えた。

しかも、何か飲んでいる。


「ちょっと、何で飲み物飲んでるの?」


「事務室のおっちゃんがくれたんだよ。

マジで美味いよ!」


「生徒指導室行かないと!」


「だって眠いんだもん、コーヒー飲み終わるまで待ってよ。」


「はぁ……。」


「拓哉と同じような反応するよね。」


「え?」


「あっ、ごめん。

さーて、飲んだから行きますか。

ごちそうさま!」


軽部先輩が急いでコーヒーを飲み終えると、私の所に来た。





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