第2章 第5話

何だかんだで胡桃のキスマークの噂も消えた頃。

いつものように学校に向かって歩いていた。


「えっ……。」


校門の前に胡桃の彼が立っている。

これはどうしたら……。

気付かれないように学校から離れて、胡桃に電話をかける。

でも電話に出ない。

苑香に電話をかけてみる。


「もしもし。」


「あっ、苑香?

今、学校の校門の前に胡桃の彼が……。」


「やっぱりか。」


「え?」


「胡桃、会いたくないって言ってたじゃん?」


「うん。」


「会えないって誤魔化してたんだけど、浮気してるのか?って彼氏がキレて……。」


「それで?」


「明日学校に乗り込んでやるって言われたんだって。」


「マジで?」


「一応、うちの親に相談して、今、うちにいるんだ。」


「あぁ……それなら安心だ。」


「だよね。

だけど、雪夏も顔を知られてるでしょ?

うちに来なよ。」


「分かった。」


私が苑香の家に向かおうとすると、何故か軽部先輩が歩いて来た。


「あれ?

どうして学校と違う方に向かってるんだよ?」


「ちょっと、あの人が友達の彼氏なんですけど、上手く行ってないみたいで……。」


「え?

彼女って誰?」


「苑香の友達の胡桃って知ってます?」


「うん、分かる。

でもアイツ、彼女は真綾まあやじゃないの?」


「え?」


「俺、真綾を知ってるんだけど、真綾の彼氏に間違いないぞ。

ちょっと付いてきて。」


私は軽部先輩について行く。

軽部先輩が胡桃の彼氏の前に立つ。


「よぉ!

俺の母校の前で何してるんだ?」


「え?

あっ、その……。」


「お前さ、真綾の彼氏だよな?」


「はい……。」


胡桃の彼氏が真綾の彼氏って……。


「真綾も胡桃ちゃんも、俺にとっては大切なんだけどさ、どういう事だよ?」


「えっと……。」


「って言うか、サクラって言うのも彼女?」


「あの……。」


サクラって……。


「真綾、めっちゃ心配してたんだよな。」


「……。」


「お前さ、浮気するなら誰にもバレないようにやれよ?」


「……。」


「で、どうすんの?」


「……。」


「どうするか早く言えよ!」


「わ、別れます!」


「誰と?!」


「真綾と胡桃……。」


「サクラは?」


「サクラはセフレ……。」


「ふざけんな!」


軽部先輩が胡桃の彼氏……を突き飛ばした。


「もうお前、どうなるか知らねーよ。

覚悟しておけ!」


胡桃の彼氏が何も言わずに走って逃げる。


「はぁ……最悪だ。

俺のコーヒー温くなっちゃったじゃないか。」


「あっ、コーヒー買いましょうか?」


「雪夏ちゃんのせいじゃないでしょ?」


「真綾に買わせるわ。

それじゃ、俺、行くわ。」


軽部先輩が帰ろうとした時に、


「軽部、待て。」


誰かが軽部先輩を呼び止めた。

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