第2章 第4話

人の噂は……何日だっけ?

しばらくクラスの皆が胡桃を何とも言えない目で見ていた。


「別に迷惑かけてないじゃん?

いちいち気にすると、ずっと続くよ?」


秋奈が無表情でそう言った。

確かにそうだけど、気になるよね。


「それで彼氏に言ったの?」


苑香が心配そうに聞く。


「うん、言った。

でも曖昧な返事されて……。」


「そっか。」


「何かしばらく会いたくないかも。」


「そうかぁ……じゃあ、私が送迎するよ。」


「え?」


「家もそんなに遠くないし。」


「苑香……。」


胡桃が泣きそうな表情で苑香を見る。


「気にするなって。

友達じゃん?」


「うん……ありがとう……。」


胡桃を見てて思い出した。

佐藤先輩が、『キスマークって名前は悪くないけど見た目からして痛そうじゃん?俺はそういうの嫌だ!』って言ってた。

別れたのに……思い出す自分が嫌だ。


「雪夏、何、ボーッとしてるの?

貴女、英語の宿題やったの?」


気付いたら秋奈が私の顔を覗き込んでいた。


「え?

英語……。

あっ、ヤバい、やってない!」


「もーう、何でいつも忘れるのよ!」


「今からやる!」


「そうね。」


すっかり宿題を忘れていた。

英語は苦手で後回しすると忘れちゃう。


「ちょっと、スペル間違ってる!」


「あっ、ありがとう。」


宿題をしている私を秋奈が見ていてくれる。


「秋奈、これ分からないんだけど?」


「あぁ……これはね……。」


胡桃も宿題を忘れていたみたいで、秋奈に教えてもらっている。

秋奈は皆の家庭教師みたいだ。


「秋奈、凄いね。」


「何が?」


「気付くし教えるし。」


「たいした事ないよ?

それに私も勉強になるし。」


「そうなんだ?」


「だって、間違えやすい所、分かるじゃん?」


「なるほど。」


「教えたら復習になるし。」


「そう?」


「うん。」


苑香が感心している。

私も感心……してる場合じゃなかった。

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