第2章 第1話

桜が散り始めた頃。


「やっぱ、噂通り、同じコース選択して良かったね?!」


「うん、これからも宜しく。」


「勿論!」


私達は高校三年生になった。

苑香と私は同じコースを選択していたおかげで、また同じクラスになれた。


「苑香!」


「あっ、胡桃!」


「同じコース選んで良かったよ。」


「うん。」


苑香に声をかけたのは、苑香の中学からの友達、水石胡桃みずいしくるみだった。

私も何度か遊んでいて、仲は良いと思う。


「あれ?

雪夏、指輪してないじゃん?

失くしたの?」


「……。」


佐藤先輩から貰った指輪の事を言われた。

勿論、別れてから外している。

捨てられないけど……。


「ちょっと……胡桃……。」


「あれ、ごめん。

マズイ事を言ったかな?」


苑香が慌てている。

でも嘘を吐く必要もないよね。


「別れたんだ。」


「え?

何で?」


話すと長くなるし言いたくない……。


「コラコラ、ツッコミ入れるなって!」


「そ、そうだよね。

ホント、ゴメン!」


苑香が止めてくれる。

有難い。


「いいよ、気にしないで。

色々あって、話すの辛いかも。」


「そうなんだ?

じゃあ、聞かない。

言いたくなったら言って?」


「うん。

ごめんね。」


本当にゴメンとしか言えない。


「ゆーきかっ!」


私に背後から抱きついて来た人がいる。


「秋奈じゃん、どうして?」


抱きついて来たのは幼馴染みの田中秋奈たなかあきなだった。


「雪夏がこのコースにするって言うから。」


「だって、秋奈、社会嫌いじゃん?」


「うん、嫌い。

でも苦手じゃないのよ。」


「え?」


「好きなのは理系なんだけど、文系クラスにいても、理系受験出来るし。」


「そうだけど……。」


「平気よ。

理系クラスの教科書は手に入れたし、兄ちゃんに聞くから。」


秋奈の兄は今年から高校の理科の教師をしている。


「兄のクラスになっても嫌だし。

まかり間違ってうちの学校の教師になったら気まずいし。」


「でも理科得意じゃん」


「まぁね、兄より得意よ。

でも高校最後の一年は雪夏と同じクラスが良かったんだ。」


「そうなの?」


「サプライズのつもりだったんだけど……嫌だった」


「ううん、驚いただけ。」


私は秋奈が化学の実験をしたいのは知っていた。

でも大学に行けば出来ると思っているみたい。


「だってさぁ、雪夏は就職するんでしょ?」


「うん。」


「同じクラスになる最後のチャンスじゃん?」


「そうだけど……。」


「そんなわけで宜しくね。」


「こちらこそ。」


友達と学生出来るのは、これで最後。

そう考えたら日々を大切にしたくなるもんだね。

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