第1章 第20話
「今日こそ帰るね。」
「うん、コンビニ行きたいから途中まで送って行くよ。」
「ありがとう。」
苑香の目が腫れていなくて良かった。
これなら親にも気付かれない。
「じゃあ、ここで。」
「うん、また学校で!」
私達はコンビニの前で別れた。
私はコンビニに入る。
「あっ……。」
いつも買ってる雑誌が、まさかの失恋特集だった。
何でこのタイミングで?って思う。
「買うか。」
何とも言えない気分だけど、買う事にした。
会計を済ませて、もう帰るだけ。
家に向かっていると、見覚えのある女子が歩いてきた。
「あっ、佐藤君の彼女さん。
あぁ……違った、元カノさん。」
「……。」
「佐藤君、落ち込んでたよ。」
「……。」
「何か言ったら?」
何を言えばいいの?
分からない。
この人、佐藤先輩の同級生だったはずだけど、名前は知らない。
「アンタさぁ、あの佐藤君と付き合ってたからって、調子に乗ってんじゃないよ!」
「……。」
何も言い返せない。
「おいおーい、後輩いじめるなって!」
聞き覚えのある声が背後からする。
「軽部君……。」
「佐藤君とやらは、そういう事をする女が一番嫌いなんだよなぁ。」
「何よ……。
ほーんと、ムカつく!」
女子は怒りながら去って行った。
「大丈夫か?」
軽部先輩が私の顔を覗き込む。
「はい……。」
「まぁな、アイツが落ち込んでるのは確かだよ。
でもさ、アイツが何も進路の事を話して無かったんだろ?」
「はい……。」
「彼女に絶対話してると思ってたのにな……。
カッコつけたかったのかもな。」
「そうですかね?」
「そうかも……だな。
でも、本当に別れて良かった?」
「……。」
ちょっとだけ『良くないかも』って思ったけど、『良かった』と思う。
「良くないの?」
「ううん、良かったです。」
「そう?」
「はい。
良かったです。
すみません、色々と。」
「いや、こっちも迷惑かけたよな?」
「はい?」
「告白させなかった……からね。
気持ちは嬉しいけど、やっぱり、自分の気持ちを大事にしたいから。」
「あぁ……。」
苑香の事……気にしてくれてるんだね。
「本当にごめんな。
他人の事どころじゃないでしょ?」
「まぁ……でも平気です。
気にしないで下さい。」
「ありがとう。
じゃ、そろそろ行くわ。」
「こちらこそありがとうございます。」
軽部先輩に助けられて、苑香が好きになった人がこの人で良かったと思った。
彼女になれなかったけど、本当に苑香は人を見る目があると思う。
私達はもうすぐ三年生になるし……これからの事を真剣に考えて、頑張ろうと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます