第1章 第14話

―――それから。


何も話す事無く佐藤先輩達の卒業式を迎えた。


「うぅっ……。」


苑香が泣いている。


「大丈夫?」


「うぅっ……何で雪夏は泣かないの?」


「うーん……分からない。

でも二度と会えないわけじゃないし?」


「そうだけどさぁ……うぅっ……。」


「そんな目を腫らせて……軽部先輩を見送るんじゃないの?」


「今日は行かない。

会う約束してるし……。

こんな顔見せたくない……うわぁーん!」


苑香が私に抱きついて来た。


「また会えるんだから大丈夫よ。」


「雪夏はまた会えるから……平気なの?」


「……。」


「雪夏?」


「もう会わないよ。」


「え?」


驚いたからか、苑香が泣き止む。


「どういう事?」


「だって彼氏のこれからを知らないんだよ?

どうなるか考えても分からないし。」


「ちゃんと話しなよ。」


「勿論、自然消滅とかしないよ。

でも……きっと私の事を引きとめないよ。」


「そうかな?

引きとめるんじゃない?」


「引きとめられたら嬉しいけど。

でも、一緒にいるのが辛い。

沈黙が怖い。

ちゃんと話して欲しくて話をふったのに、聞くなって態度されて。

こういうの何度も繰り返すかな?って。

その度に落ち込んでモヤモヤして。

そんなの幸せじゃないよ。」


「そうなんだ……。

でも……雪夏が別れるのが幸せって言うなら、私はそれでいいや。」


「うん……。」


別れるのが幸せか不幸か分からない。

これから私は三年生になるし、進路について考える。

その時、私は多分佐藤先輩には相談する事も愚痴を言う事も出来ない。

そんな状態で自分の未来と向き合う自信も無い。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る