第1章 第6話
佐藤先輩を見て見ぬフリした私達は、教室に荷物を取りに行った。
そして、そそくさと学校を離れた。
「洋服が先?
ファミレスが先?」
「うーん、洋服?」
「じゃあ、洋服から。」
ファミレスで長く話しちゃって、買い物に行けないなんて、よくある話。
それなら買い物終わらせて、門限ギリギリまでファミレスに居座る方が良いと思う。
「洋服ってさ、何か特別な時に着るヤツ?
どんなのがいいの?」
「軽部先輩とデート。」
「え?」
「軽部先輩、就職決まったって言うから、お祝いに出かけませんかって誘った。」
「え?
そうなの?」
「うん。
二人で出掛けるの初めてだし、可愛い格好したいじゃん?」
「あぁ……今までと違う感じ?」
「うん、そう。」
そうは言われても、軽部先輩の好みなんて分からないし……。
こんな時に佐藤先輩に聞けばいいけど……。
「佐藤先輩に聞かなくていいよ。
さっきのアレ見ちゃったし、それどころじゃないっしょ?」
「じゃあ、明日会うから、それ以降に……。」
「それでも良いんだけどさ……。
でもセール、明日までなのよ?」
「あぁ……そうだ、セールだった。」
苑香は憧れのショップの洋服を買いたいと、いつも言っていた。
その洋服はセールじゃないと買えないくらい、私達には高かった。
「ねぇ……どうする?」
「予算はいくら?」
「全部で一万円位?」
「そんな出せるの?」
「お年玉持ってきた。
五千円だと思ったら、一万円だった。」
「ラッキーじゃん?」
「だよね。
でも一気に一万使う勇気は無いや。」
「そうね。
うちら、バイトしてないし。」
私達はバイトをしていないし、するなら学校に届け出ないといけないのが、めちゃくちゃ面倒くさい。
「ワンピースにしたら?
上下揃えるより安いよ?
ほら、これは三千円。
こっちは五千円。」
「えーっ、私、ワンピース着た事ないよ?」
「無いからいいんだよ。
ギャップあるし。」
「そうかな?」
「試着するのタダだよ?」
「じゃあ、試着だけ……。」
絶対似合うと思うんだけどなぁ……って思ったからオススメした。
とりあえずサイズ合う安い物で、似合うと思うのを片っ端から。
「どうかな?」
「ちょっとサイズ合わないね?」
そんなこんなで、色々着替えさせてみる。
店員の視線が冷たい気がするけど、怒られなかった。
「これはどう?」
「あっ、ピッタリ!」
ちょうどサイズもピッタリ、予算内でも買える物を見つけて、小躍りしてしまった。
「これにしようかな?
これに合うバッグやアクセサリーも見ていい?」
「勿論!」
時間はかかったけど、苑香が嬉しそうで、私まで嬉しくなった。
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