第5話 協会の掟

アディスは、おじいさんの言う事を信じドラゴンソールを売ることをやめた。


「うーん。でも俺達今、お金がないんだ。何か働ける場所がないか教えてくれないか?」


アディスは、おじいさんにこれまでの事を話した。

「ふむ。お前たちは何かの縁で結ばれておるのかもな。仕事か…。」


何やら、考え始めたおじいさんが深いため息交じりに答えた。

「よし。わしも関わった身じゃ。この店の手伝いをしてくれぬか。わし一人だともう商品を運んだり・整理するのもきつくなってきたんじゃ。やってくれぬか?」


まさか、おじいさんのお店で働けるなんて思いもしなかった。

「えっ。いいの?こっちは全然良いですよ!ありがたい!」


「交渉成立じゃ。今日からよろしくだの。早速、働いてもらいたいのじゃが、その前にお前達は、泊まる所はあるかいの?」


「いや、まだ泊まる所は決めてない。お金も無いからな。まずは働き口を考えていた所だった。」


「それじゃ、わしの家に空き部屋がいくつかあるからそこに泊まればええ。」

「えっ。本当に良いのか。こんな知り合ったばかりの奴だぞ。こんなに良くして何も出てこないぞ。」


アディスは、テジュの事が頭をよぎった。人への信頼が考えられない状況でもあり、ありがたい言葉を素直に受け止めきれずにいた。


「ええんじゃ。わしの家族はもういない。わしだけが住んでいる家じゃ。好きに住んだらええ。」


「…。本当にお金も無いし、後で何処かに売られたりしないよな。わかった。じいさんを信じるぜ。よろしく頼む」


アディスは、その時おじいさんの目の奥に潜む孤独さを感じた。

(きっと、この人も家族と別れて寂しかったんだろうか…)


おじいさんの住んでいる家は、道具屋のすぐ隣に立っていた。

二階建ての丸太小屋風の結構しっかりした家がそこにはあった。


「へぇ。良いお家じゃないか。ここに一人だと広すぎるかもね」


おじいさんは、そそくさと家の中に入りドアを開けたまま台所の方に向かっていった。開いているドアの中を見ると、玄関からはすぐにリビングにつながっていて、2階につながる階段は螺旋状になっていた。


台所もオープンな状態で広く、豊富な調味料や、生活感あふれる料理道具も並んでいた。リビングに大きなテーブルが設置されていて、そこにおじいさんが入れてくれた飲み物が用意されていた。


「お前達、ここに座って飲み物を飲みなさい。おいしいから」

テジュが小走りでテーブルに設置されている椅子に座った。


「おじいさん。この飲み物なぁに?」

「ん?この飲み物は、ハーブと蜂蜜そこにホットミルクを少し入れたハーブミルクティーじゃ。熱いからフーフーしながら飲むんじゃぞ。」


「うん。わかった。」


テジュは、ハーブミルクティーが入ったコップを両手で持ち湯気に顔を近づけて、鼻から息を吸った。


「あっ、良い匂いがする。フーフー。」

熱さを気にしつつ、ゆっくりと唇をコップにくっつけ、湯気の中テジュは一口飲んだ。


「おいしい。ココがあったかくなってきた。」


テジュは、コップを置き両手で胸の辺りを覆った。


「そうじゃろ。これは気持ちが落ち着く薬草のハーブを入れておるんじゃ。味もおいしいし、わしもよく飲むんじゃ。」


アディスもハーブミルクティーを飲み、テジュの落ち着く姿を目の当たりにして、安堵した。


「テジュ、大丈夫か?」

「うん。このハーブミルクティーがおいしくて、気持ちもあったかくなったから大丈夫だよ。」


「テジュとは、今までひどい生活を送っていたから、何も言えなかったけど、こうして落ち着いたテジュを見れて良かったよ。」


「さて、飲み終わったのなら、おぬしらの部屋に案内するぞい。」


アディスは、アジュの安心した顔を見て気持ちが高ぶっていた。そして、おじいさんの目の前に立ち頭を下げた。


「おじいさん。こんな分けのわからない俺達を受け入れてくれて。このままだったら、もっと酷い生活を過ごしていただろう。本当に感謝してもしきれない。ありがとう。本当にありがとうございます。」


アディスは、頭を下げながら感謝を伝えた。


「ええい。頭を上げい。ここまで感謝される筋合いはないわい。わしはわしの考えもあっておぬしらを雇用したんじゃ。ちゃんと働かんとお金は渡さんからな。」


「ああ。分かっている。ちゃんと働くよ。」

「あと、この家に住まわせるとは言ったが、タダじゃないからの。家賃はもちろん、給与から引かせてもらうからの。」


「わかった。よろしく頼むよ」


おじいさんと一緒に2階に上がり、何部屋からある中で、アディスとテジュはそれぞれに部屋を選び、階段を下りてきた。


先にリビングで待っていたおじいさんが、下りてくる2人に出かける合図を出してきた。


「今から協会に行くぞい。説明は向かいながら伝えるぞ。」


協会に向かいながら話し始めた。


「まず雇用する時、必ず雇い主は協会で手続きをするんじゃ。このフォーチュンという街の町長がちゃんとしていての。街で働いている雇用者を管理する事で、福利を充実させ、働かない者や悪い者達を生み出さないようにしているのじゃ。この制度のおかげで、この街はどんどん豊かになっていっての。今じゃ、盗人や悪人等はいなくなったんじゃ。」


「へぇ。良い街なんだな。確かに、他の大きい街に行くと、盗みや悪人が蔓延っているのが現状だ。何日かこの街にいるけど、何も悲鳴や悪人の姿を見たことがないな。」


「そうじゃろ。そうじゃろ。この街の町長ブレイドは優秀なんじゃよ。」


そうこう話をしていると、目の前に大きな建物が現れた。


「ここじゃ。協会は。」

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ドラゴンの鱗 -ドラゴン種族と世界を変える- @SHAMAN13

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