すれ違うもかみ合う歯車
すれ違うもかみ合う歯車
「私は、後輩の唯が好き」
「私は、うい先輩が好き」
「彼女の、私を見下ろすような背の高さが好き」
「先輩の、無理して見上げてくる低い背が好き」
「彼女の、陽の下で光り輝く、ほんの少し黄金めいた銀髪が好き」
「先輩の、陽の光を吸い込み、月の存在すら許さない黒髪が好き」
「彼女の、角張って理知的で、ともすれば冷たい感情すら感じる眼鏡が好き」
「先輩の、人見までの距離のない、温かさと安心を感じるコンタクトが好き」
「彼女の、誰にも解くことが難しいであろう問題を精緻に組み上げられた式で解いてゆく姿が好き」
「先輩の、誰よりも早くスタートラインを飛び出したまま空気すらも置き去りにして走る姿が好き」
「彼女の、野性的で血気のあふれる時として私すらも捕食しようとするような透き通った美しい瞳が好き」
「先輩の、全てと競い、打ち勝とうとする気の強さの隙間から時折覗く私への依存とも呼べる弱さが好き」
「彼女に、膝ギリギリの短く少し扇情的ですらあるスカートから覗く下腿を好いてもらえている」
「先輩に、私が何度打ち倒されようと、そのたびに挑み続ける負けず嫌いを好いてもらえている」
「「私はあなたが、好き」」
短編アラカルト 冬月雨音 @rain057
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