夜の女王
深淵の闇。どこまでも黒く、なにもない。ただ声だけが、そこに木霊していた。
「面倒なことになりましたね、女王陛下」
「面倒なことになってしまいましたわ、女王陛下」
「面倒なことこの上ありませんね、女王陛下」
「各種プロトコルを経由して接続。システムに意見を求めます。侍女を叱るべきですか?」
「是」
「是」
「是」
「侍女たちよ、そんなことは分かっています。控えなさい。あなたたちに意見を求めてはいません」
「申し訳ありません、女王陛下」
「お許しください、女王陛下」
「差し出がましい真似をしました、女王陛下」
「……システムへ意見を求めます。侍女を許しても?」
「許可」
「許可」
「許可」
「三人の侍女を許します。以降は沈黙して待つように。……では、重大な損傷を起こしたプログラムの処理について、システムの意見を求めます」
「破棄」
「修正」
「破棄」
「合議制多数決による多数派を支持します。プログラムコード『プロパガンダ』の破棄を即座に執行。プログラムを『神殿』へと送ることとします。ロールの代行は…………」
「なんということでしょう、女王陛下」
「あんまりです、女王陛下」
「かわいそうです、女王陛下」
「システムに意見を求めます。侍女を叱るべきですか?」
「是」
「是」
「是」
「黙っていろ、と言ったはずです。あなたたちも神殿へ送りましょうか?」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「よろしい。では、この三人の侍女にロールの代行を行わせることに、システムの意見を求めます」
「是」
「是」
「否」
「合議制多数決による多数派を支持します。以降、彼女の……、いえ、『プロパガンダ』のロールは三人の侍女が執行します。私のメインシステムから侍女を分離します。以上。接続を切ります」
「すべて種の保存のために」
「すべて種の保存のために」
「すべて種の保存のために」
「ええ、そうね。すべて種の保存のために。さて、『パミナ』をここへ呼んでください」
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