番外編⑧ ASMR回(リリスの耳攻め&囁き吸精編)
「んっしょ、んっしょ……ふぅ、準備出来たぁ~」
緩やかなテンションのまま一作業を終えたリリスの声が部屋に木霊する。
つい先程まで、俺の顔に目隠しを掛けて両手足を椅子に縛り付けていたのだ。
どうしてそんなことをするのかというと、サキュバスであるリリスが生きるために必要な精気を、俺の身体から吸い上げるためである。
淫魔らしく行為を経た方が吸収効率は良いのだが、今回は気分転換に以前の方法でやってみようということになった。
「今日はリリのお願いを聞いてくれてありがとねぇ~。いつものもいいけどぉ~、たまには前みたいにするのも良いよねぇ~」
目隠しをされているので表情は見えないが、リリスの声音はどこかワクワクとした期待の色が滲んでいた。
俺も久しぶりの拘束型吸精に緊張で身体が強張っている。
「あはぁ~。緊張してるのぉ~? 顔、硬くなってるぅ~」
どうやら彼女の目から見てもガチガチに肩に力が入っているようで、クスクスとからかうように指摘されてしまう。
込み上げる恥ずかしさから顔を逸らそうとしたものの、手足が縛られてるせいで動きづらい。
「ふふっ、逃げたくても逃げられなくてもどかしそうだねぇ~。さっきより顔が赤いしぃ~……照れてるんだぁ~? あはぁ~可愛い~!」
抵抗する俺の動きがツボに刺さったのか、リリスは愉悦を隠すことなく歓喜していた。
図星を言い当てられた羞恥心から顔に熱が集まっていく。
彼女の言うとおり、頬が紅潮しているとイヤでも理解させられてしまう。
両手を覆うことすら出来ない無力感に、形容できない情動が沸々と腹の中で煮えくり返る。
そんな俺に構わず不意に両肩へ何かが乗せられた。
感触からして恐らくリリスの手だろう。
つまり今、彼女と向かい合う姿勢になっている。
もし目隠しをされていなければ、胸元と太ももが露わになったミニスカメイドさんが視界に映っていただろう。
残念ながら俺の目には黒一色しか映っていないのだが。
などと余計なことを考えている時だった。
「それじゃぁ~……
──そろそろ、始めちゃうねぇ~♡」
耳に吐息が掛かる距離で開始を囁かれると、鼓膜を甘く揺らされたことで心臓が大きく弾んだ。
遅れてゾワリと背筋に弱い痺れが走り、内に生じたくすぐったさに身を捩る。
「まずはぁ~肩の力を抜こっかぁ~。もみもみ♪ もみもみ♪」
そのままリリスは俺の両肩をグニグニと揉みほぐし始めた。
程よい力加減によって、強張っていた肩から凝りが解れていくのが分かる。
アルバイトとはいえメイドらしい手際の良さに警戒心も緩んでいっていると……。
「──どぉ~? きもちい~ぃ?」
いつの間に耳元に顔を寄せていたのか、リリスの呼び掛けにビクリと全身を揺らしてしまう。
またも身体中に走った甘い刺激に声が抑えられそうにない。
思わず漏れた呻き声に、彼女がクスっと小さく微笑むのが分かった。
「あはぁ~♪ 今、びくんってしたねぇ~? マッサージしてるのにぃ~、肩じゃなくて耳が良いんだぁ~?」
リリスがわざとらしい声音でからかって来る。
よほど面白いのか耳たぶを親指と人差し指で挟み、クリクリと弄くる始末だ。
右耳の次は左耳を指先で弄り、かと思えばまた右耳に戻ったり。
そうして細くて暖かい指で耳たぶを擦られる度に、自分の意志と関係無しにブルルっと小さく身悶えてしまう。
歯を食いしばってなんとか耐えようとするが……。
「──今度はぁ~……耳たぶさんをパクってしてあげるぅ~♡」
追撃と言わんばかりに甘いウィスパーボイスが聞こえたかと思うと、右耳が生暖かい感触に包まれた。
指とは掛け離れた艶めかしい感触に抗いきれず、ビクッと大きく肩を揺らすほどの刺激に襲われる。
「んんむ~。ペロ……はむっ、ちゅ。れろ……っぱ……」
それだけでなく、耳の裏側を舌で撫で回し始めた。
口内の生々しい温もりはもちろん、唾液に塗れた舌が這う耳に這い回る独特の感触が、脳や胸の内を甘美に痺れさせていく。
どれくらい続いたのだろうか、気付けばリリスは耳を咥えるのを止めていた。
「──っ、はぁ~……。あはぁ~♡ 顔、真っ赤っかぁ~♪ そんなに気持ち良かったのぉ~?」
うっとりとした調子でリリスは問い掛けて来る。
しかしとてもじゃないが今は返事が出来る状態じゃない。
深呼吸を繰り返して息を整えるのがやっとだ。
その様子を見て言葉にされずとも悟ったのだろう。
リリスがゆっくりとした足取りで背後に回っていた。
何をするつもりだろうかと訝しんだのも束の間、彼女は俺の鎖骨に沿って自らの指を這わせていく。
擽ったさと同時にピリッとした小さな刺激にもどかしさを感じてしまう。
一撫で毎に身体を震わせる俺を見て、クスクスとリリスの笑い声が聞こえてくる。
「あはぁ~。いっくんの反応ぉ~、ホントに可愛いなぁ~」
女子に可愛いと言われ、どうしようもない羞恥に駆られる。
今すぐ穴があったら入りたいが、両手足は依然として縛られたままなので微塵も動けない。
「──リリ、分かってるんだよぉ~?」
耳元に顔を寄せて甘い声音で囁かれ、全身が強張る俺を余所にリリスは続ける。
「──いっくんならこんな拘束なんてぇ~、その気になれば簡単に破れるんだぁ~って。でもそうしないのはぁ~、変に抵抗してリリを傷付けないためなんだよねぇ~?」
一言発せられる度に、鼓膜を通してビリビリと蕩けるような刺激が脳を痺れさせる。
身体はすっかり火照っていて、額にはジワリと汗が滲み出ている程だ。
お願いだから早く楽にして欲しい。
もう頭の中ではずっとそれだけが反響し続けている。
「いっくんのそうゆうとこぉ~……」
リリスはそこで言葉を区切り、ギュッと背後から抱き着いて来た。
背中にむにゅりとしたふくよかな感触が伝わった瞬間、身体が海老のように反ってしまう。
手も足も反射的に伸ばしそうになったが、縛られてるせいでガタリと椅子を大きく揺らしただけだった。
もはや限界寸前の理性にトドメを刺すように、リリスは息遣いが判るくらいに耳元へ顔を寄せて……。
「──リリ、だぁ~いすき♡ あむっ」
チカッ。
まるで目の前でカメラのシャッターを切られたかのような閃光が瞬いた気がした。
「ちゅ~……ん、んん……っ」
ドクドク、と身体の中に煮え滾っていた熱が耳から吸われていく感覚が走る。
熱……つまり精気が今まさにリリスによって吸われているのだ。
身体の火照りが波のように引いていくにつれ、覚束なかった思考がゆっくりと冷静さを取り戻していく。
「──ぷはぁ~マジ美味ぃ~♪ ごちそうさまぁ~♡」
やがて吸い終えたリリスが耳から口を離し、恍惚とした息を漏らしながら称賛を口にする。
荒くなった息を整えていると、真っ暗だった視界が急に明るくなった。
唐突な眩しさに目をキツく閉じてしまい、数瞬の間を空けてようやく瞼を開けると、頬に色っぽさのある朱を滲ませたリリスと目が合う。
彼女が目隠しを取ってくれたようだ。
精気を吸って満腹になった彼女は、ニコリと明るい笑みを向ける。
「今日も美味しかったよぉ~いっくん」
お礼を言った後、トンっと一歩だけ距離を詰められる。
そのまま左耳に顔を近付けてからリリスは言う。
「──次の吸精は、たぁっくさんリリを可愛がってねぇ~♡」
そう微笑んで次の約束を告げるリリスは、サキュバスらしい魅惑的なモノだった。
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ASMR作品っぽくリリスの吸精シーンを書いてみました!
ASMR聴きながら書いたのですが、どうだったでしょうか?
いつか本当にASMR化したいなぁと思いつつ、あとがきはこの辺とさせて頂きます。
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