#2 お祭り騒ぎな体育祭!
奴隷の俺が決闘する羽目になった件
右を見ても左を見ても、なんなら前後からもけたたましい歓声が響く。
泉凛高校体育祭の最終プログラム、決闘ゲームは盛大な盛り上がりをみせていた。
その最終プログラムにおいて俺──
「我らが泉凛高校の二大美少女を誑かした辻園に裁きの鉄槌をぉぉ!!」「やっちまえ勇者野郎!」「男の敵ー!」「
耳を澄ませば聞こえてくるのは数多の罵声、しかしそのほとんどが身に覚えの無いことである。
年下のお嬢様の奴隷になったのは事実だけど、肝心の目的は二人のメイドが生きるために必要なエサ役として選ばれたからだ。
そんな事情は声の主達からすれば与り知らないモノであり、奴隷になった俺が急に二大美少女と仲良くなったようにしか見えないのは分かる。
でも彼女達の事情は
だから曖昧に濁すしかなかったのだが……。
それがまさかこんな結果を齎すなんて誰が予想できただろうか?
「──今日、キミはここで断罪の時を迎える。覚悟はいいかい? 辻園伊鞘」
「よくないに決まってんだろ。勇者様相手に決闘なんて面倒なことこの上ないわ」
自らを正義だと信じて疑わない茶髪のイケメンにツッコミを入れる。
彼は異世界での子爵位を持つ、ブレイブラン家の嫡男だ。
文武両道で正義感の強い性格から勇者と呼ばれる程の存在である。
そんな彼に俺は人気者の女子二人を誑かした極悪人として敵視されていた。
こうして決闘の場に引っ張り出されたのも、その罪を贖えとかいう訳の分からない理由でだ。
うんざりする俺を余所に、勇者はキッと勇ましい面持ちで競技用の木剣を構える。
「辻園伊鞘。キミは二大美少女の緋月さんとリリスに対して、自分の言うことを聞くように脅した。人として非常に恥ずべき罪に手を染めたこと……それは決して許されない悪行だ!!」
「えぇ……」
ほら、こんな感じで。
ここまでありもしない罪状をツラツラと述べられたら、頬の一つや二つ簡単に引き攣る。
「ふざけないでぇ! いっくんにそこまで出来る度胸があったらぁ、とっくの昔に童貞じゃなくなってるはずだもん!」
「り、リリス。あまり大声でそんなはしたないこと言わないで下さい。事実でも伊鞘君が可哀想です!」
歓声に混じってリリスとサクラの声が聞こえる。
けれども悲しいかな、俺へのフォローのはずが追撃にしかなってない。
むしろ庇おうとしてる分、この場のどの罵声よりもダメージが大きかった。
決闘が始まってないのに既にメンタルがボロボロな俺に、勇者は毅然と声高に言う。
「彼女達に惹かれるのは理解出来る。しかし一方的な感情で食い物にして良い理由にはならない!」
「食い物にされてんのは俺の方なんだけど。ちゃんと二人に確認取った?」
「どうせキミを庇うように強要されるだろうと、クラスの男子から助言は受けている! そうでなくとも、無理に聞き出して傷付ける訳にはいかないさ。見え透いた嘘なんて無駄だよ」
「だから当事者の話聞けって言ってんだろ……!」
なんで俺の言い分とかサクラ達の言葉より、他の人の話を信じるんだよ。
こっちの言うことを疑うなら、そのクラスの男子から逆恨み満載で吹き込まれた嘘も少しは疑えばいいのに。
ほとほと呆れるしかなく、ついため息が出てしまう。
そんな俺の反応が気に障ったのか、勇者があからさまに顔を顰める。
「なんだいその余裕は? 負けたら二度と彼女達に近付かないという約束を忘れた訳じゃないだろう? それともまさか、勇者であるボクに勝つつもりなのかな?」
「いやその約束ってそっちが勝手に決めたことで、俺は一切了承した覚えないし……」
「勝てないからってそんな負け惜しみはみっともないよ」
「あ゛ーっ! もう無理だわ、これ以上話してたら頭がおかしくなる!!」
あー言えばこー言う!
やってられるか!!
同じ言葉を喋ってるはずなのに、全くと言っていいくらい会話が成立しない。
堪忍袋の緒が切れる音が聞こえたのと同時に、俺は頭を掻き毟りながら対話を断念した。
ホントもうやだこの勇者。
少しでも怒りを静めようと、改めてこうなった経緯を思い返す。
確かそうだ、事の発端は一ヶ月前にまで遡ることになる。
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ヤバエサ、二章スタートです!
まさかの対勇者(笑)……伊鞘のエサライフはここで終わるのか?
3日以内に更新出来るようにします( ´ ▽ ` )ノ
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