第2話

加藤玲亜さん。

もう、面倒だからカトレアさんでいいや。


カトレアさんの家は、都心から離れている。

と言っても、学校までの距離は電車で、一時間あまり。

通えない距離ではない。


僕の家は、その中間なのだが、待ち合わせ場所は、彼女の最寄り駅。

時間は12時。

もちろん、お昼のだ。


「しかし、遅いな・・・」


駅舎から出ると、小高い山が見える。

あのふもとにあるらしいが・・・


その時、眼の前が真っ暗になる。


「だーれだ」

「カトレアさん」

「違う」

「かわいくて、やさしくて、温かい、カトレアさん」

「おまけで正解」


今時、ベタだな。


「ごめーん、待った?」

「ううん。今来たとこ」

「ベタだね」


お互いにね。


「ところで、カトレアって、私だよね?」

「ああ。もう面倒くさいから」

「じゃあ、私は君をりんちゃんと呼ぶね」


そんなに親しくないが、たまにはいいだろう。


「で、どうして僕を呼んだの?」

「詳しくは、車の中で話すわ」

「車?」

「うん。乗って」


そこには、リムジンがあった。

運転手らしき人が立っている。


「お嬢様、お客様、お乗りくださいませ」

「ありがとう。セバスチャン」

セバスチャンって・・・


「カトレアさんちって・・・」

「うん。この町の旧家で、地主」


あっ、そう・・・


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