不思議な青年
今日も僕を遠くから眺めているあいつは何なんだ?
気味が悪い。
「大丈夫かい?お坊ちゃん。今日はなんだかボーっとしているねぇ」
「大丈夫ですよっ。少し考え事をしていただけですっ。それよりその荷物思いでしょう?僕に持たせてくださいよ」
「いいのかい?助かるねぇ」
青年と老婆の会話を盗み見ている男がいた。
「今日は優しい青年かぁ」
この男の名はカルバン。
このお青年を観察することがカルバンの日課となっていた。
カルバンは、何に対しても無関心な男だった。
ある日たまたま偶然に、見かけた青年によって、カルバンの頭の中はその人でいっぱいになってしまった。
二週間ほど前、外をぼーっと歩いていたカルバン。
カルバンは一人の青年に出会った。
その時の彼は今のように優しい青年には思えなかった。
はぁはぁはぁはぁ
不審な若い男が俺の前を横切った。
優しい緑色の瞳からさす鋭い眼光。
その恐ろしさは、そこらにいる魔物より鋭く鬼のようであった。
俺の視線に気が付いたのか、逃げるかのように狭い路地に走っていった。
そして数日後、珍しく俺は街の喫茶店へ行った。
頼んだものは水だけだ。
そこに、なんだか騒がしい客が入ってきた。
「待ってくれよ!ごめんって。じゃあ、また、明日の昼、ここで待ってるから。」
その声の正体は、また、あの青年だった。
彼にあんなセリフを言わせるなんて、相手はどんな奴なんだ?
彼に対してだけは、今までにないくらいに気になって仕方がなかった。
次の日の昼、俺は、青年が誰かに言っていた昼、その喫茶店の前で彼が来るのを待っていた。
しかし一向に、青年は姿を現さなかった。
代わりに、フードで頭をすっぽりと覆った鮮やかな金髪の女がこちらへ向かって走ってきた。
通行人の間を通り抜け、俊敏な動きを披露した。
その女は、コートのポケットから鈍色に光るナイフを取り出した。
次の瞬間俺の腹に鈍い痛みが走った。
じわじわと広がる痛みが俺を襲った。
なんだ?この感覚は。
身体冷たい。
痛い。
恐る恐る、痛みを感じる腹部に視線を落とす。
あまりの痛さに、視界がぼやけていたがこれだけはわかった。
腹部からおびただしい量の血液が流れだしていることを。
激しい痛みに体が震え、意識を保つことができそうになくなった頃。
元々青白かった男の肌は、ますます血色を失っていっていた。
その時俺は死を覚悟した。
つまらない人生。
ヒトと深く関わりあったことのない人生。
やっと俺の興味を駆り立てる青年が現れたのに、俺の人生は終わってしまうのだろうか。
意識が沈んでいく最中、誰かが俺を呼んだかのような気がした。
二人の舞台荒らし ひるねま @choppy321
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