二人の舞台荒らし
ひるねま
プロローグ
そこには、無色の冒険者の男、カルバンがいた。
何色にも染まっていない、つまらない男。
呼吸をし、栄養を取り、目に映るものに気に留めることもなく、聞こえるものは右から左へ流すだけの人生を送る男。
必要な栄養を取るために、最低限の仕事しかしない男。
もちろんそんな男に友人と呼べる人はいなかった。
また、そこには、色にあふれる青年ルイスがいた。
あらゆる色に自らを染めて行く青年。
見たもの、聞こえたもの、感じたもの、すべてを自らに取り込む青年。
彼もまた、親しい人間は一人もいなかった。
しばらくは、全くの交わりもなく過ごした彼ら。
己が生きていることすら分らない者。
己の生きる道を突き進む者。
やがて二人は間接的に交わった。
無色な男カルバンは、目撃した。
自分と正反対の男の生きざまを。
初めての胸の高鳴りに夢中であった。
ある時は、他人を思いやる熱い男になるその青年を。
また、ある時は、無邪気で無垢な青年になり、
またある時は、まじめな紳士を演じていた。
またある時は、冷徹な無慈悲な人間になり、
ある時は、狂気あふれる狂人の仮面被ったその男に夢中であった。
色にあふれる男ルイスは興味を示した。
いつもどこからともなく現れるその男の正体に。
初めて感じた不快感に襲われていた。
視線の奥に広がる気味の悪い闇。
ある時は、嘗め回すような視線を送る男。
そしてある時は、目を見開いて壁と壁の隙間からのぞき込もうとする不審な姿。
口元だけゆがませた気色の悪い笑みを向けてくる男の君の悪さに興味を掻き立てられていた。
ルイスの向かう場所には必ずカルバンが現れた。
カルバンが向かう場所にも必ずルイスが現れた。
お互いに惹かれあっていたのかもしれない。
二人が直接交わるまで、そう時間は有さなかった。
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