第51話:最期の行動
生首だけとなったイズミは髪の毛を使って薄暗い通路を這い回る。
(…なんで、
イズミは血走った目で部下を探すが、不思議と見当たらない。そうこうしているうちに、イズミは目的の部屋へと到達する。
(…一旦、こっちの世界から逃げられば、向こうでゆっくり体の再生実験もできる、わ〜)
その部屋はイズミの身長よりも大きい機械が部屋の中央に鎮座しており、太いホースが数本部屋の至る所から伸びていた。部屋の反対側には大きな輪が壁に掛けられており、中央の機械からは不気味な低音が響いていた。そして近くの機会にイズミが触れると、辺りが重い音を立てながら振動し始めるのであった。
(…頭、痛っ)
最後に逃げる時に氷室の弾丸が頭部へと当たったせいか、妙な頭痛を感じながらイズミはなんとか機械の操作を終えると壁に掛けられた輪が明滅を始める。まるで夜空のように真っ黒に染まった輪の中を星の様に小さな明かりが幾つも輝いており、さらに脈動をして壁自体が動いているようであった。
生き物のように蠢く輪の内部、それこそがイズミの言う
(さて、これで逃げられるわ〜)
イズミは輪の中に飛び込もうと機械の操作を止めようとしたとき、いつのまにか体が動かなくなっていることに気がつく。そして頭の中に見知らぬ声が響き渡る。
(よぉ、こうやって話すのは初めてだな。なあ、イズミ所長さん)
(誰っ!?)
(俺だよ、アンタに改造された
イズミの身体に入り込んだ奏矢は、イズミの体を動かし始める。機会をめちゃくちゃに操作し、パイプを引きちぎり、破壊の限りを尽くし始める。呆気に取られるイズミであったが、止めようにも体を動かすことは出来ない。
(いやっ、やめてっ!)
(俺がやめてくれって頼んだとき、聞かなかったよなぁ?)
焦るイズミに対して淡々と破壊を続ける奏矢、そして多次元へ渡るための入り口である輪の中が変化していく。先程までは夜空のような状態であったが、いまではさまざまな色の絵の具をぶちまけたような色彩の空間と化していた。さらに奏矢は機械を壊しながらその部品を、不気味に変化した空間へと投げ入れていく。
(おっ、なんかすげーことになってんな!)
先程まで絵の具をぶちまけたかの様になっていた多次元への入り口が、鮮血に染まったかのように変化していた。そして表面には電流が走っており、一層禍々しさを醸し出していた。その様子を見て、奏矢は子供の様にはしゃぐ。
(いやー、いいね! 楽しくなってきた!)
(…なにを、するつもりかしら〜?)
(一人で死ぬぐらいなら道連れにするわ〜、って感じだな。まあ、製造責任は取ってくれよ?)
(いやっ…やめて…)
奏矢は命乞いをするイズミを無視して、輪の前へと立つ。そして少しだけ気持ちを抑えるために深呼吸をすると、輪の中へと飛び込んだ。
「きゃあああああっ!?」
イズミの断末魔がこだまする。そしてまるでその断末魔に呼応するように輪の中から部屋の機械を巻き込んで爆発を引き起こすのであった。
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