第44話:クラーケン
イズミは大理石で出来た机を、紙でも破るように裂く。そしてリリを無表情で見つめながら、体に突き刺さった銀の矢を次々と抜いて行く。背中や足に突き刺さった銀の矢を関節のない軟体生物を思わせる滑らかな動きの腕で矢を掴むと引き抜いて投げ捨てる。
「あなたも、まさか、怪人なの?」
リリはあまりのイズミの変貌にポツリと呟く。
目と口は裂けて眼孔は金色に染まり、通常の両腕に加えて破れた白衣の背中から左右に4本ずつ、軟体生物を思わせるように吸盤がついた腕がゆらゆらと揺れていた。
「そうよ〜、私は
イズミが間延びした口調でリリの質問に答えるのを聞きながらリリは再度矢をつがえ、引き絞る。そしてすぐさまイズミに向かって矢を放とうとした瞬間、目の前が真っ白に染まる。それが大理石で出来た机の片割れだと理解できたのは、体全体に衝撃が走ったあとのことであった。イズミによって投げつけられた硬く、重い大理石の机はリリを巻き込みながら地面を衝撃とその重さで抉りとっていく。まるでダンプカーにでも轢かれたような衝撃を受けたリリは、芝生の上を机とともに転がっていく。
「…うっ!?」
リリは体に乗った机を押しのけてなんとか立ち上がる。しかし、大理石のぶつかった衝撃で体の至る所の皮膚が裂け、額からも血が滴り落ちる。そして肺も損傷しており、口の端から血の泡が溢れていた。そして焦点の合わないリリがなんとかイズミへと視線を向けたとき、再び残った机の片割れがリリへと投げつけられた。
「
イズミが投げつけた机ごとリリは吹き飛ばされ、地面を転がっていく。血塗れになり、動かなくなったリリへとイズミは歩み寄ると背中の腕の一本でリリの首を掴んで持ち上げる。
「それで
(…被検体? え、
リリはぐらつく視界でイズミを見ながら、頭の中で奏矢へと質問する。奏矢が言っていた"異世界から侵略しにきた
(…ごめん)
そしてリリの意識は完全に闇に飲み込まれて行くのであった。
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