第35話:終わりの始まり
騒ぎのあった土曜から2日後の月曜日。いつものように通学カバンの底に奏矢を押し込んで登校したリリは、自身のクラスに入った瞬間にクラスメイトの男子がスマートフォンを持って突撃を受ける。
「あっ、おい、天野。これ、お前だろ」
「えっ?」
かざす様に見せたスマートフォンには先日のショッピングモールでの事件のニュースをスクリーンショットしたもので、そこには小さくではあるがはっきりとリリの顔がわかる程度には映し出されていた。
「あー、うん。あの日あそこに行ったけど…」
「おー、すげー! なあ、あそこでなにがあったの!? マジで牛の化け物とかいたの!?」
「えー、えぇと」
質問攻めにあうリリは困った表情を浮かべる。そしてなんで答えれば良いか悩んだそのとき、リリを男子から庇うよいにして
「ねぇ、ちょっと。天野さん、困ってるでしょ?」
「あー? 良いじゃん、友達がニュースに出てたんだぜ?」
「じゃあ、もっと長い付き合いの"
優はリリへ同意を求めながら、クラスの最後列の机に突っ伏す二宮へと視線を向ける。二宮の名前が優の口から出たことは聞こえているだろうに、ピクリとも反応しない。
「’…いや、いーわ」
そう言ってリリに絡んできた男子は自分の席へと戻っていく。優は腕組みをして暫しその男子を睨んでいたが、思い切り息を吐くとリリへと向き直る。
「天野さん、おはよう! あのあと大丈夫だった?」
「あっ、うん。その、ありがとう」
「いーよ、いーよ。あ」
キーンコーンカーンコーン。
始業を告げるチャイムが響く。リリと優が会話をそこで切り上げて着席すると、間もなく担任の女教師が入ってくる。そして出席を取る最中、ふと窓際の生徒がグラウンドを見て大声をあげる。
「なっ、なにあれっ!?」
「ちょっと! 今出席を取っているんだから静かにして!」
「でっ、でも先生っ。あれっ、あれを見てよ!」
窓際の生徒がグラウンドに向かって指を向ける。それに釣られて他の生徒もグラウンドを見ると、大声を上げて騒ぎ始める。その様子を見ていた担任はイライラした表情をすると、初めに騒ぎ始めた生徒のもとまで歩み寄る。
「いったい、何を…っ!?」
グラウンドを見て担任も言葉を無くす。そこには頭部はなく、代わりに胸部に厳つい男の顔が埋め込まれるようにしてあった。背には鱗粉が淡く光る2対の蛾の羽を持った異形がそこに立っていた。そしてしゃがみ込んだかと思うと、グラウンドから一気に2階にあるリリたちの教室へと飛び込んでくるのであった。
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