第12話:失敗報告
--リリと奏矢が病院で話し合いをしていた数時間前のこと。
奏矢を改造した
(あの
「あああああああがああ」
「人が考え事をしているときに煩いわね~。ちょっとお腹を開いているだけじゃないの。人体強化薬は耐えたんだから核移植のための切開ぐらい叫び声を上げずに耐えなさい」
手術台の上で寝かされ拘束された男が叫び声を上げる。
そして胸の辺りから腹部までぱっくりと裂けたおり、その傷口から真っ黒な体液が手術台の上に広がっていた。イズミは近くに立つナースの格好をした黒縁眼鏡女へと声を掛ける。
「
「……はい」
銀色のトレイに乗せられたほのかにオレンジに光る球を、
イズミはそれを手づかみで取ると、男の裂いた胸へとそれをねじ込む。その瞬間、男の身体が激しく痙攣して手術台の上で魚の様に跳ねる。
「この瞬間が毎回楽しみなのよね~。どんな怪人になるのか、ガチャを引いているみたいで飽きないのよ~」
男の身体がボコボコと膨らみ、拘束具が勢いで弾き飛ぶ。
手術台から転げ落ちた男の身体が沸騰しているように膨らみ、見る間に黒い体毛に覆われていく。顔面も膨張し、顔面が全面へと伸びていく。頭が裂けて黒い体液がほとばしり、その裂け目から一対の太い角が生えてくる。口から涎を垂れ流し、身体全体が大きく、そして筋肉質になっていた。
「……完成ね~。おめでと~う。さて、名前はどうしようかしら~」
イズミは近くの棚にある1冊の本を取り出してぺらぺらとページを捲り始める。本の背表紙には『世界の寓話・神話集』と擦れた金色の文字で書かれていた。
そしてとあるページを見つけると、そこを指さしさながら”新しく生まれた”怪人へと命名する。
「そうね、これだわ~。今からアンタは『
「……はイ。何をしますカ?」
イズミは
「そうね~、まずは」
そう言って何かを頼もうとしたイズミの耳にドタドタと足音と遠くから響く足音が聞こえてくる。
そしてすぐに手術室の扉が開けられて、蛇の顔をした怪人が飛び込んでくる。
「報告致しますっ!
「なんで死んだのかしら~? まさか
「それが……単独行動していた
「ふぅん?」
蛇型怪人は舌をちろちろと動かしてアピールする。
それを無視してイズミは腕を組んで考え込む。
(まずありえないけど戦闘員が怪人を返り討ちにした可能性がある? まあミジンコが象に勝つような話だけど~。あるいは
イズミは腕組みを解き、少し間を置いて命令を下す。
「……少し早いけど計画の前倒しをするわ~。そろそろ、派手に動きましょうか。さあ、楽しい
その号令によって一気に怪人や
指示を終えたイズミは手術室を出て、ある一室へと向かう。その部屋はイズミの身長よりも大きい機械が部屋の中央に鎮座しており、太いホースが数本部屋の至る所から伸びていた。部屋の反対側には大きな輪が壁に掛けられており、中央の機械からは不気味な低音が響いていた。そして近くの機会にイズミが触れると、辺りが重い音を立てながら振動し始めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます