第9話:奏矢の逆襲
延焼の中から
流れ落ちる体液をまったく気にも止めることなく、己をここまで蹴飛ばした少女から視線を動かさなかった。
(あのクソガキ……一体何だ?)
理解が追いつかない。華奢な体つきの女、しかも子供が己を蹴飛ばした挙げ句に吹き飛ばされたのだ。
しかも拳銃程度では傷1つすらつかない肌に、靴跡を残すなど普通の人間の出来ることではない。『己と同じ怪人やその類いか?』、そこまで考えた
「おう、クソ犬。さっきは俺の顔を傷つけてくれたなぁ?」
その目の前に居る歪んだ笑顔の少女に気後れするものの、
「だけど、ま。お礼だけは言っておくよ。あ・り・が・と・う。そんでその臭い口をちょっと閉じてくれ」
余りに近距離で豪炎を吐き出したため、
その豪炎の波を銀色に染まった腕が2本突き出ると、
「がぅううううぅん!??」
「おー、なんかすげぇな。メントスコーラの怪人版ってか」
右目が炭化し、口からは黒い煤を吐き出す
臓腑が自身の業火で灼かれ、右目を押さえながら
「がはっ、がふぁっ……。クソガキ、お前、何だ。おかしい、お前も俺と同じ、怪人か?」
「……俺が誰だって? ははっ、知りたい? なあ、知りたい? 説明して欲しい? 全部? なあ? 何が起こってるのか? なんでこんな華奢な女の子がお前をボコボコに出来たのか? なんでさっきぼこぼこに殴りつけたはずの相手にボコされてるのか? なんで”俺”が無傷で立って居るのか? いや、なんでこんなピンクのふりふりのついた可愛いワンピースの魔法少女みたいな格好になってるか? なあ、知りたいだろう?」
膝を着いた
少女の背から出ているヴェールが生き物のように動き、
「俺はさっきお前に灼かれた
リリは、否。リリに寄生した銀のスライムである奏矢は苛つきを隠さずに
「ああ、そうそうお礼を言ったのは”俺”が寄生先の身体を動かすためには、寄生先の身体の意識が無くなってなきゃどうも駄目らしい。散々
先ほどまで
そして奏矢は
「”お前に仕返しすること”が、この子の願いなんだよ。この辺りにある臓器、そこが
そういうと奏矢は
ブチブチと小気味良い音を奏でて摘出された”それ”。まるで宝石のように光るその玉を
「おっ、俺の、か、核っ、核が」
膝を着いた状態から立ち上がろうとしたその次の瞬間、力を込めた脚が粘土細工のように変形して床へと零れ落ちる。脚だけではない。バランスを崩して咄嗟についた手も脚と同じく、どろりと床に零れる。
「かくかくうるせぇ、アインシュタインかよ」
「かっ、かっ……」
どろりと身体全体が溶け始めた
そしてそのタールはすぐさま揮発し始めて、ものの数秒で完全に消滅する。そしてふと、先ほど放り捨てられていた”前の寄生先”である
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