第8話:魔法少女の身体を乗っ取り
先ほどまで全身を炎で灼かれ、致命傷を受けて瀕死だったリリは、今まさに”任務を完了”して出て行こうとする
だが
「……園長先生を」
リリは自分の身に何があったか理解出来なかったが、しかしながら身体に力が満ちあふれていることを感じていた。
そしてそれを弓につがえると、力を込める。
「返してっ!」
弓を引き絞りきり、
銀の矢は宙で3つに分裂すると、
「このクソガキィ!!」
「きゃっ……!」
毛むくじゃらの太い腕がリリの首元に伸びて、そのまま固い床へと叩きつける。
床が大きくへこみ、コンクリ片が辺りへと飛び散る。だが、リリはその体勢でも矢を素早く構えて
「なんだァ、お前のその格好? いや、それよりも……?」
じろりと
先ほど見たこの少女の格好は地味な紺のパジャマであった。しかも先ほど孤児院をめちゃくちゃにするほどの豪炎に巻き込まれていたのを確かに見ていた。だが焦げ1つついていないフリルのふわふわしたピンクのワンピースに、火傷1つついていないその身体、
「園長……先生を…返してっ!」
「ああ? 園長先生? あの
「……園長先生は……優しい先生だもん。さっきも……私を、庇ってくれた……!」
首を絞められ息も絶え絶えなリリの脳裏には、先ほど自身を炎から庇ってくれた
リリは段々と遠くなる意識をなんとか踏みとどまらせ、思い切り拳に力を込める。
「園長、先生を返してっ……!」
床に組み伏されて首を絞められながら、リリは渾身の力を込めて
「死ね」
だがその血飛沫はリリのものでない。殴りつけたほうである
「お前、何をしっ!?」
まるで銀の手袋を身につけたように銀色に染まった右拳が
「ああ、痛ぇな……本当に痛ぇ。だけどようやくこれで」
先ほどまで顔についていた青アザに、首元から昇ってきた銀の膜が吸い付くと一瞬で元の元気な肌色へと復活する。顔の傷だけではない。背には銀のヴェールを纏い、そのヴェールが身体のあちこちの傷にくっつくと一瞬で傷が塞がっていく。
「これでようやく、自由に動ける」
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