第3話 日々精進

 私は、成績の良かった兄から、勉強法の全てを学んだ。前の人生では、下手なプライドが邪魔していて、兄から何も教わらなかった。兄も自分の妹なのになぜ、勉強ができないのだ情けないと思うばかりで、お互いの心が離れていた。

兄のおかげもあり、高校2年の時には上位10人には常に入っていた。うちの高校で、上位10人であれば、大体の志望校には受かる。でも、調子に乗りやすい私がなんとか、きちんと精進するように励んだ。

部活の方もやりたかった役者もやりつつ、充実させていった。

 そして、兄には「人生一度きりなんだから、やりたいことやらなきゃだめだよ。親の言うこと聞いてたら何にもチャレンジできないよ」と毎日のように暗示にかけるように語りかけてみた。兄も高校時代、演劇部。まあ、兄の影響で演劇を始めた私なのだ。兄も掛け持ちで、放送部、弁論部に所属しており、演劇部でも全国大会出場。放送部でも大会優勝。弁論部でも優勝していた。まあ、活舌もよく、人前で話すことに関してはピカ一だったのだ。なのに、前の人生では地方公務員。親が望んだ安定した職業というもの。兄はいつも、半分投げやりだった。大学も一番の志望校受験させてもらえないならと、生徒会の仕事に精進してたり、大学時代も好きなところを就職面接受けなかったりと…。そんなに親の顔色ばかり伺って…。長男だってもっと自由にしたらいいのに。



 高校3年。私も部活の引退。益々、勉学に精進する日々。

だが、同じクラスの一人の男子がなんかおかしい…。名前は浅間。

まあ、前の人生では、大人になってから、SNSで改めて知り合い一緒に飲みに行ったり遊びに行くようになった奴だ。おかしいというのも、前の人生で高校時代全く話さなかったのに、なぜか向こうから知り合いのように話しかけてくる。すごい違和感だ。高校時代は寡黙な奴だったのに。


 もしかして…、私の他にも現世からこの時代に来てる人がいるとか…。いやいや…。25年前にきてから、私は一切誰にもそのことは話していない。誰にも信じてもらえないというのもあるが、誰かに話をしてしまったら、また現世に戻ってしまうのではないかという恐怖心があった。人生を絶対に変えたいと思っている私には、それが一番の恐怖だった。

 私は、浅間とは適当に話を合わせるようにした。もちろん、40代までの記憶なんかないように振舞った。しかし、あるとき彼が、

「俺さ、未来わかるんだよね。99年のノストラダムスも来ないし、東日本大震災もある、東京オリンピックは延期になるし…お前も知ってるんだろ?」

突然の彼の質問に、少し動揺してしまった。

(いや、隠し通さねば…。でも、未来から来たという浅間に安心感も覚える。)

私の頭は混乱していた、

「何の話?」

私は、そう切り返すのがやっとだった。ここは演劇部の見せ所。絶対に顔に出さないように、声で悟られないように…。

「そっか、ごめん、変なこと言って…忘れて」

浅間も慌てたようにそう言った。

(何とかごまかせたかな…、でもこいつには要注意だな…)




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