第13話

 フィヨルドの森にて、グレータータラテクトを討伐した『翼竜の翼』

 正確に言うのであれば単騎で討伐したのだが、それは良いとしよう。

 

「はぁ……ソウタが規格外ってのは分かっていたが、ここまでとは……最近、どんどん強くなっていると思えばここまでになってしまうとは」


 ケインが頭を抱える。

 シーフのサリネも呆れるような表情を浮かべる。


「これはー、控えめに言っても化け物ねー。こんな事出来ちゃうレベルだと、戦闘力に関してはSランク冒険者にも負けないかもねー」


 マルゴもマリンも同様に頷く。

 化け物は酷いと思う。

 当の本人はというと確かに、グレータータラテクトは簡単に倒せたが、そこまで凄いことをしたとは思っていない。


「そんな大袈裟な!? ただグレータータラテクトを斬っただけじゃない?」


 俺がそう言うと、さらにメンバーは呆れ顔を見せる。


「はぁ……どこに空に跳び上がって一撃でBランク級のグレータータラテクトの頭を刎ねるCランク冒険者がいるのよ!」


 怒ったような表情を見せるマリン。


「この凄まじい戦闘力に、大容量のアイテムボックス持ち、それに容姿もなかなか……このことが貴族に知れ渡れば、躍起になってソウタを取り込もうとするのが目に見えるな」


「そうだねー。遅かれ速かれソウタの存在は知れ渡るようになるねー」


 さらにケインは深い溜息を吐く。


「凄い面倒なやつが仲間になったもんだなぁ……」


 

 俺はそんな『翼竜の翼』のメンバーの心配などはいざ知らず、頭部を切断したグレータータラテクトをアイテムボックスに模した『異空間収納』へと収納していく。


 それにしてもグレータータラテクトを討伐すると、SP1500も入った。

 Bランク冒険者推奨魔物はかなりSP的にもかなり美味しいんだなと思った。


 グレータータラテクトを収納した俺は、


「よし、大蜘蛛ちゃんはアイテムボックスにしまったし、次の大蜘蛛ちゃんを探しに行こうよ」


 SP獲得の為にも『翼竜の翼』と一緒にグレータータラテクトを狩りに行こうと提案する。

 それに対して、パーティメンバーの全員が呆れ顔を一層深くする。


「はぁ……大蜘蛛ちゃんって……ここまで来ると一層清々しいわね」


「ねー。ここまで来るとソウタに見つかった魔物たちが少し可哀想になってくるねー」


 マリンとサリネがそう言う。

 そして、『翼竜の翼』であるケイン。


「まぁ……ソウタが強いというのはパーティとしても助かる。だが、これからソウタに任せっぱなしでは俺たちの為にもならない。だから次の戦闘はソウタは援護に回ってくれ!」


 俺もケインに納得して、了解する。

 俺はしっかり頷いた筈なのだが、念を押すケイン。


「くれぐれも間違えて一撃で斬り落とさないでくれよ? いいな?」


 俺もケインの圧力に押されて


「あぁ。つ、次は気をつけるからさ」


 というか、理不尽だと思うのは最初に関して言うなれば、ケインが倒されるなら倒しても良いというから斬ってやっただけで、俺は指示に従ったまでだ。


 少し胸の中がムッとしたのだが、ケインにそう言っても多分、強く言われるだけなのでやめておいた。


 その後、俺たちはフィヨルドの森をグレータータラテクトを求めて、さらに徘徊した。


 Bランク冒険者級の魔物ともあって、中々すぐには見つからず、結局1日中探索して、俺が最初に一撃で討伐したのと合わせて、計3匹としか遭遇しなかった。

 

 後に遭遇した2体に関しては、俺は完全に裏方へと回った。


 グレータータラテクトを巣から落とす為に、木々にくっついた糸を斬って斬って斬りまくった。


 何とも退屈だったが仕方がない。

 

 そして巣から落っこちた大蜘蛛をマリンが魔法で遠距離攻撃、サリネと俺が攪乱、そしてケインが近距離攻撃でダメージを蓄積させパーティ共同で、グレータータラテクトの討伐に至った。


 1人で魔物を討伐するのも爽快感があって良いのだが、皆で協力して討伐するというのも達成感があるという面でかなり良いものがある。



 俺たちはフィヨルドの森を出て、フィンブルド領へと戻ってくる。


 街の人の注目が以前以上に感じる。

 通りすがる町娘達がひそひそと話す。



「あの人達が最近注目の『翼竜の翼』らしいわよ。あの若さにして、もうBランク冒険者級の実力者の集団なんだって」


「それに中でも最近、冒険者登録して、『翼竜の翼』に加入したソウタっていう冒険者がパーティの中でも一際、強いらしい」


 町娘が『翼竜の翼』の話をヒソヒソと話す。


「そうなんだ……そのソウタって人はあの黒髪のカッコいい人?」


「うん、ソウタって人はまだ15歳なんだって!」


「え!? わたしと同い年なの? かっこよくてそんな強いって……わたし狙ってみようかな?」


 こんな話を最近はふとしたところで聞くようになった。


 元々、『翼竜の翼』の知名度があったとはいえ注目されるっていうのは嬉しい。

 マルゴは「ソウタぁ、人気者だな! ワハハ」なんて茶化してくるから、仕返しとばかりに脛を軽く蹴っといてやった。


 俺たち『翼竜の翼』は注目を一身に浴びて、冒険者ギルドへと向かっていった。


 

「今回の討伐はグレータータラテクト3匹ですね。ソウタさん、今日もアイテムボックスに入っているのでしたら、作業場までお願いします」


 受付嬢のシーラさんは『翼竜の翼』のギルドカードを処理しながら、そう俺に告げる。

 俺もいつもの段取りで、作業場へとグレータータラテクトを置きに行く。


 俺は作業場へと来ると、アイテムボックスを模した『異空間収納』からグレータータラテクトを置いていく。


「うわぁぁ! 大きいとは聞いていましたけど、グレータータラテクトってこんなにも大きいんですね……」


 受付嬢の子、ルミアというのだが、ルミアがアイテムボックスから出現した大蜘蛛に驚いて仰け反る。


「それにしても、このグレータータラテクトだけ凄く綺麗ですね。まるで一撃で倒したかのような。殺し方……」


 ルミアは俺が倒したグレータータラテクトを眺めながらそう呟く。

 そして、俺の方へと視線を変え詰め寄ってくる。


「これ、ソウタさんがやったんですよね? こんな事出来るのソウタさんしか考えられないですし……本当に、ソウタさんは何者なんですかぁ? 勇者だって言われても不思議じゃないですよぉ?」


 俺は詰め寄ってくるルミアから、視線を逸らす。 

 というのもルミアも中々に可愛いので、近寄られると俺も男である以上、目のやり場に困ってしまう。


「ちょっと、ルミアさんちょっと近いですよ……」


 そう言うとルミアは面白そうにして俺を揶揄う。


「ふふ、ソウタさんも案外、可愛いとこありますね」


 俺はルミアに何か負けた気がしたので、作業場へとグレータータラテクトをさっさと置いて、『翼竜の翼』の元へと戻った。


 その後は、シーラさんから討伐報酬を受け取り、マルゴの誘いによって酒場へと向かうことになった。


 そして、いつも通りにマルゴとマリンが潰れて、酒場のテーブルに突っ伏していた。


 俺はいつも通り潰れる2人を見ながら、グラスに残ったエールを呷る。

 

 すると、遠くの方から女の子の怒鳴り声のようなものが聞こえた。

 だが、ケインとサリネも酔いが少し回っているのか聞こえていない様子。


 仕方ないと思った俺は1人で、叫び声が聞こえた元へと駆け付けた。

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【オンボロ剣】でも【神剣】にする最強剣士 月風レイ @tsukikaze0

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