第39話未練
正直、周平と別れてからも未練があった。
私から何回も連絡をしていた。
その度に周平からはそっけない返事が来た。
何度か会ったりもした。
お互いの近況報告を飲みながらするだけで、友達となんら変わらなかった。
初めはヨリを戻したい・・・という気持ちは少しあったかもしれない。
それよりも近況が知りたい気持ちのほうがおおきかった。
それは相手からも感じていた。
最後にあったのは社会人になったばかりの時だった。
まだ、私は夫の前の彼氏と付き合っていた。
「そんな年上と付き合ってるの?」
「うん、もう2年になるよ」
周平にもそのとき彼女がいた。
その日も普通に呑んで、たわいのない近況話をしていた。
もう、終電間際であった。
「もう一件、いく?」
珍しかった。
周平はわたしとの約束を早く切り上げることが多かったり、会う時に今日は何時に帰ると宣言することが多かった。
「え?どうしたの珍しいね」
「いや・・・別に帰るでいいけど」
「・・・うーん・・・帰るわ」
「わかった。駅まで送る」
彼女の話をしていたから、きっと関係性がうまく行ってなかったのだろう。
「送ってくれてありがとう、じゃあね」
「うん、バイバイ」
私は振り返って改札に入ろうとした。
が、腕を引っ張られた。
「ん?」
「あ、ごめん」
「なに?なんかあった?」
次の瞬間、力強く抱きしめられた。
「・・・」
「あのとき別れたのはゆいかのせいじゃない、俺のせいだ。俺他の人に目移りしてた」
3年経った真実だ。
わたしは、その相手が誰なのかなんとなくわかっていた。
「れな先輩・・・だよね」
「うん・・・本当にごめん」
あのライブに居た先輩だった。
悔しさでもない、真実を知ることができた安心でもない、けど涙はながれてきた。
「周平・・・離して」
周平は恐る恐る私を離した。
「わたしもたくさん束縛ばっかしてごめんね」
「ゆいか・・・泣いてる」
周平は私の涙を拭おうとしたが、制した。
「もう、終電きちゃうから行くね。バイバイ」
私は振り返らなかった。
3年経ったけど、真実を知ったのはやはり辛かった。
なんとなくは気づいていたが。
もう、周平とあうことはないだろう。
その時そんなふうに確信した。
忙しい日々の流れで、すっかり悲しみも忘れていた。
私は、結婚した。
そのことを特に周平には告げなかった。
周平との思い出は実家に帰ったときに。
プリクラをみてあーあの時こうだった。って思い出すだけなら罪にならないよね。
私と周平の間にできた思い出は、いつの間にか
「良い思い出」として心の中に残った。
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