第30話必然
思ったより課題が多くて、ライブが終わって2週間、周平と会っていなかった。
みきとまゆと会って以来、わたしは大学とバイト先を行き来してばかりだった。
いつ会えるか、予定はなかった。
そんなある日のことだった。
「ゆいかー今日あきらさんもちょうどこの辺いるらしいからめしいこうぜ」
アルバイトが終わった後、こうたくんがご飯に誘ってくれた。
あきらさんは大学がこの近くで私たちの一個上だった。
「いいよー!じゃあ従業員口で!」
ロッカーで着替えて、携帯を確認すると周平から着信があった。
わたしはメールで「バイトの人たちとごはんたべてきます」と打ち、ロッカーをでた。
「お待たせしました。」
「あきらさん先店いるってー。」
「はいよー」
「ゆいか!」
後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。
周平だった。
「周平?なんで?」
「・・・ここの近くで飲んでたから。電話したじゃん」
「今日ごはんいくって---」
「あ!もしかして周平さんですか?すいません、無理矢理ご飯誘っちゃったのおれです!」
康太くんはペコっと頭を下げた。
「迎えに来てくれる彼氏さん優しいな!じゃあ、またな」
康太くんは気を遣ってくれたのだろう。
その場を去っていった。
「・・・いいの?ごはん」
「あ、うん大丈夫・・・」
周平は明らかに不機嫌になった。
「だれ?さっきの」
「同い年のアルバイトのこうたくん」
「2人でご飯でも行こうとしてたの?」
「2人じゃないよ・・・もう1人と合流する予定だった」
「ふーん・・・俺電話したよね?」
「・・・」
「俺の電話よりそっちの方が行きたかったんでしょ」
いままでバイト先に迎えにきたことなんてなかった。
まさか周平がくるとは思わなかったのだ。
言いたいことはいろいろあったが、自分にも非があったと思い、グッと堪えた。
「ごめんね・・・電話返さなくて」
その日周平と夕飯をたべて解散した。
その間、ほとんど会話がなかった。
その夜こうたくんからLINEが来た。
ごめんね。と私を心配してくれた内容だった。
大丈夫だよ、気を遣ってくれてありがとうと返信してわたしはベットに横たわり、そっと目を閉じた。
またわたしは周平を怒らせてしまった。
いろいろと気をつけていたのに。
どんどん本音が話せなくなっている自分自身に、まだ気づいていなかった。
そして、水面下でなにかが動いていたことも、私はまだ知らない---
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