第9話Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:



土曜日。今日はバレンタインデー当日である。




周平くんとは14時に待ち合わせしている。



クッキーを作った。なんの変哲もない。お母さんも手伝ってくれた。



「ねえ、これだれにあげるのー?」



「友達だよ、みんなで配り合うの」



半分嘘で、半分本当である。

女子校のバレンタインはお菓子交換会である。

みんな腕によりをかけてつくってくる。





片想いの相手にあげるのは初めてだった。



なんていって渡せばいいのだろう。







街はカップルでいっぱいだった。



みんな紙手提げをもっていた。



少し駅についた私は、MP3で音楽を聴いていた。



FUNKY MONKEY BABYS

「恋の片道切符」



たまたまシャッフルでながれてきた。




この通りに思いを伝えられなかったらしんどいな。

そうおもいながら周平くんを待っていた。



「お待たせしました」



「部活おつかれさまー」



近くの喫茶店へと向かった。



今日こそはいろいろと恋愛のことを聞きたいと思っていた。



「俺の顧問がさー」



周平くんの話に耳を傾ける。

周平くんは話がうまかった。



わたしが知らない人の話でもおもしろおかしく説明してくれる。



アイスティーを飲んで一息ついたところで、きいてみた。




「そういえば彼女いるの?」



やっと聞くことができた。本当に今更である。



「彼女?いないよー。居たこともないよ」



「へえ、そうなんだ。意外」



「ゆいかちゃんは加藤とつきあってたんだよね」




加藤あきら。それは中学3年のとき、初めてつきあったひとだった。



加藤はさとしや、周平くんとおなじ学校だった。




加藤経由でさとしとも知り合ったのだった。




「いまあいつどうしてるかわからないやー」



「いい、いい。どうせ悪さばっかりしてるよ」



私の前ではよく悪ぶっていたけど実際悪さを目にしたわけではなかったので、ただ単に自分悪ですよアピールをしてるものだと思っていた。



付き合って2ヶ月もしないで別れた。



最後の1ヶ月はほとんど連絡をとっていなくて、メールでお別れして終わった。




加藤は本当に問題児であった。



通学中に女性とトラブルとなり、

さとしから学校を退学させられたと聞いていた。




周平くんから加藤の話を振ってきたということは、もしかしたら私のことを牽制してきているのかと思えた。



加藤と付き合っていた女なんて、周平くん嫌かな・・・



恋愛の話はこれでおわってしまった。





喫茶店をでて、駅にむかった。



まだ肝心のバレンタインのクッキーを渡さずにいた。




ここで渡さないと











「あ、あのね!周平くん」



震えて声が裏返った。




「こ、これ・・・クッキー・・・つくったの」



「え?」




鞄からクッキーの入った袋をわたした。

やっと渡せた。



「めっちゃ嬉しい・・・ありがとう」



周平くんは照れたような顔で受け取ってくれた。



「今日バレンタインだから・・・たまたま」




違う違う、こんなことが言いたいんじゃない。



でも肝心の告白はやっぱり自分からはできなかった。




「ねえ、いま食べてもいい?」




「う、うん!口に合うといいけど」



「・・・すっごく美味しいよ」



周平くんがまたくしゃっとした顔で笑った。

ああ、その顔がとても好きだ。




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