第3話 黒鉄ノ剣士VS窃盗楽団
エイパスとエイルが初めて出会った時、別の場所ではある事件が起こっていた…
フローリア共和国首都「ラウワ」、この街は120万程の人間や亜人種が平和に暮らすサクラ大陸で1番の科学都市である。中心にあるキャッスルガオンと呼ばれる城塞を中心に「居住エリア」「商店エリア」「工業エリア」の3つのエリアが囲んでいる、そしてキャッスルガオン内で…
ローラ「ガオンハルト王、この書類なのだが…ガオンハルト?」
書類束を持ちフローリア共和国の王である「ガオンハルト」の執務室を尋ねたこの女性はメイド長である「ローラ・リープトン」だ、彼女は国の2代組織の1つ「May-do」のリーダーである。部屋に居ないことを確認すると扉を閉め、廊下を歩き出す
ローラ「いないのか、全くどこにいるのやら…おい、今いいか?」
ローラは廊下を掃除していた掃除メイドに声をかけた
掃除メイド「はっはい!これはメイド長、何事でしょうか?」
ローラ「業務中すまない、ガオンハルト王を見なかったか?執務室にいなかったのだか」
掃除メイド「あぁ〜それでしたら王は城内広場で街の人を集めてバーベキューやるとか」
ローラ「なに!?」
ローラは廊下の窓から城内広場を見るとそこには信じられない程の大きさの鉄板が置かれていた
ローラ「なんと…数分前はなかったぞ。いやそんな場合ではない、すまなかったな!」
ローラすぐさま広場へ向かった、その頃広場には大勢の人がやってきていた。広場には熱々の巨大鉄板、そしてとんでもないサイズの塊肉が置かれていた
ルナ「フローリア共和国に住む皆々様、本日はお集まり頂きありがとうございます。この巨大鉄板を作ったサクラ大陸最高頭脳、天才発明家にして「ドクターメイド」の称号を預かるこの私「ルナ・カデン」が本日のMCや!難しい話は抜きにして早速肉を焼くとしよう、頼むで王様ァ!」
ルナがマイクで叫ぶとコックコートを来た男が出てきた、そうこの男こそがフローリア共和国の王であり、「王の反逆」を打ち破った者の一人「騎獅王 ガオンハルト」だ
ガオンハルト「任された!ふん!」
ガオンハルトは巨大な塊肉を巨大な大剣の一振で上空へと打ち上げた
ガオンハルト「いくぜ、ガオンカリバー!!」
そして大剣を再び構え振り抜くと衝撃波となった斬撃が塊肉を直撃する、塊肉は見事にバラバラの細切れとなり鉄板の上に次々と落下してきた
ルナ「皆さん!これが我らが王様のダイナミック調理!はい、拍手!」
ルナのMCとガオンハルトのパフォーマンスで集まった人達からは拍手や驚きの声、楽しそうな笑い声が上がった
ガオンハルト「みんな!肉は山ほどあるから好きなだけ食べて行ってくれよな!」
ルナ「いや〜王様、相変わらずノリが良くて助かるわ〜」
ガオンハルト「ルナこそ〜昨日の晩にメールが来た時はびっくりしたぞ〜」
ルナ「ごめんて、なにせロボの素材として取寄せた鉄板が余ってしもうて肥やしにしとくにはもったいない代物だったし、どうせならパァーと楽しいことにでも使おと思ってな〜。それより王様、よくメイド長口説きおとせました…ね…」
ガオンハルト「どうしたルナ?」
顔が引き攣るルナ
ルナ「王様…後ろ…」
ガオンハルト「後ろ?」
言われて後ろをむくとそこにはただならぬ雰囲気のローラが立っていた
ガオンハルト「げっ、メイド長…」
ローラ「ガオンハルト王?これはどういったことでしょう?」
ガオンハルト「これはその…ルナがバーベキューしようと昨日メールしてきまして…」
ローラ「それで?」
ガオンハルト「すぐさまフラッターと国営放送でバーベキューのお知らせを…」
ローラ「ほう、それで?」
ガオンハルト「肉焼いてます…」
ローラ「この大馬鹿王が!!」
すごい剣幕でどなるローラ
ガオンハルト「いやだって〜楽しそうだし〜」
ローラ「私言いましたよね!イベント開催する時は最低でも2日前には教えてくださいと、それなのに貴方は毎度毎度…」
グチグチと言い続けるローラ
ルナ「王様、これ」
ルナがガオンハルトに小声で話しかけある物を渡した
ガオンハルト「そ、そうだ〜ほらローラ」
ガオンハルトは焼きたての肉を串に刺し、ローラへ向ける
ローラ「むっ、なんですかこれは…」
ガオンハルト「焼きたてをローラにも食べてもらおうと思ってさ、ほらあーん」
ローラ「…いただきます、全くこの程度で私の気分が晴れると思ったら大間違いですからね!」
余程美味しかったのか、言葉とは裏腹に満面の笑みのローラ
ルナ「相変わらず単純やな〜傍から見たらただのアベックやで」
ルナのフォローによってその場は収まった、街の人らも楽しそうに食事を楽しんでいた。だがそれを遮るかのように遠くから爆発音が響きわたった
ローラ「ガオンハルト王、花火まで上げたのですか?」
ガオンハルト「いや、その予定はないな…ローラ、ルナここを頼む!」
ガオンハルトはコックコートを脱ぎ捨てると大剣を持ち走り去った。爆発は商店エリアで起こっていた、逃げ回る人々、爆発の煙が晴れるとそこには2人の男が立っていた
ジノ「リオ、火力が強すぎるぞ」
リオ「ごめんごめん、ワクワクしちゃってつい」
2人の周りにはフローリア共和国を守る組織「フローリア騎士団」の団員達が横たわっていた
リオ「でもガッカリだよね〜」
ジノ「あぁ、これでもあのカヤパを倒したとされる騎士団の騎士か」
倒れる団員の頭を踏みつけ躙るジノ
ジノ「さて、演奏を再開するとしよう。我々の理想の為にね」
動き出した2人、だがそこへ斬撃波が飛んでくる
リオ「おわっと、危ないね〜」
ジノ「来たようですね」
飛んで来た先には黒い装束に身を包み、額に「骸骨」が描かれた仮面を被るガオンハルトの姿があった
ガオンハルト「お前達か、この騒動の原因は!」
ジノ「騒動とは心外ですね、私達は素晴らしい音楽を奏でていただけですよ」
ガオンハルト「無許可の路上ライブは感心しないな、お前達は誰だ?」
リオ「僕達はオルフェンデット楽団だよ」
ジノ「素晴らしい演奏と引き換えに皆様からチップを頂いてるだけの小さな音楽団です、以後お見知りおきを」
深々と頭を下げるジノ
ガオンハルト「お前達か、最近他国を荒らし回ってるコソドロってのは…ヴィオレイトから話は聞いていたがここまで大胆に攻めてくるとは…」
ジノ「リオ、先に帰りなさい。ここは私が幕引きをしましょう」
リオ「うん、先に帰るね!バイバイ王様!」
ガオンハルトにブンブン手を振るリオ。そして幼子の様な姿から一転し巨大な龍へと姿を変え、空へと飛び去って行った
ガオンハルト「人が龍に…」
ジノ「珍しいでしょう?あの子は龍人種でね、龍の時の名は「ナベリウス」。さてそろそろ本題に入りましょうかね…ガオンハルト王、貴方の国に「聖杖」はありますか?」
ガオンハルト「聖杖…?名前からして聖具の様だがこの国にある聖具はこの「聖剣ガオンカリバー」だけだ」
ジノ「なるほど、貴方は嘘をつく人間ではないとなれば移動したか…」
ガオンハルト「狙いはその聖具らしいが何が目的だ、人様の国を吹っ飛ばしたからにはそれ相応の理由があるんだろうな?」
剣を構えるガオンハルト
ジノ「私はね、やり直したい事があるのですよ。その為には聖杖の時を戻す力が必要なのです」
ガオンハルト「時を戻す…だと?そんなデタラメな事が出来るわけが…」
ジノ「それができるのですよ!この街で時空が歪む反応があった、だから来た、だけどここには何も無かった、街を吹き飛ばしたのはあまりにも貴方の騎士達がしつこかったものでね、ごちゃごちゃ聞かなければ骸にならずに済んだものを…」
踏んでいた騎士を蹴飛ばすジノ、それを見たガオンハルトは即座に間合いを詰めた
ガオンハルト「悪いがお前は今一番やってはいけない事をしたぞ!!」
ガオンハルトは身の丈ある大剣を縦横無尽に振ったがジノはそれを全てかわした
ジノ「いやはや、かするだけでも肉を持ってかれそうな斬撃…あの証聖王もこんなのを喰らえばひとたまりもなかったでしょうね。ならば、これならどうでしょう」
ジノは高く飛び上がり街灯の上へ登った
ジノ「あれが見えますか、ガオンハルト王 」
ジノが指さす方向には瓦礫に埋もれた親子の姿があった
ガオンハルト「っ!」
ジノ「爆発の煙で見えなかったでしょう?貴方が斬撃からくる衝撃波のおかげで煙が晴れて姿を現したのですよ」
くすくす笑うジノ
ジノ「あそこにこんなのが飛んでいったらどうなりますかね?」
ジノが片腕を上げると地面に散乱してた金属片や鉄パイプが浮かび上がる
ガオンハルト「おい、馬鹿な事はやめろ!相手は俺だろう!!」
ジノ「私が何の策もなく貴方に戦いを挑むわけないでしょう。貴方の実力を測り、貴方を痛めつけ、この場から逃げる為の最善策、それがこれですよ?ほら、救えるものなら救ってみせろ」
ジノが上げた手を前に振ると浮かんだ金属片らが一斉に親子めがけて飛び出した
ガオンハルト「この外道が!!」
親子を助ける為に傍まで行くも瓦礫を退かす間は無いと判断したガオンハルトは大剣を地面に刺し、素早く振れる腰のサーベルを引き抜いて飛んでくる金属片らに応戦した。だが全てを弾くことはできず金属片は身体を裂き、1本の鉄パイプが左肩を貫き地面に刺さった。血が滲む衣服、顔は仮面で見えないものの首に巻かれた白いスカーフは顔からつたってきたであろう血によって赤く染まりつつあった
ガオンハルト「ハァハァ…っぐふ…」
仮面の下からボタボタと垂れる血、右手に握ったサーベルも指の力が抜け地面に落としてしまう
ジノ「騎獅王、貴方が優しすぎなければ私をこの場で倒せたものを…」
ガオンハルトの傍まで近づくジノ
ガオンハルト「…ど…した…こ…ちは…まだ…まだや…れるぞ…」
力を振り絞り、傍に刺しておいた大剣を掴むガオンハルト
ジノ「ふはははははは!これはこれは、死に損ないが随分と!痛めつけるだけにするつもりでしたがこの場で貴方の命の音色を止めてしまいましょうか!」
ジノが自身の右腕に金属片を纏わせ鉄の槍を作ると大きく振りかぶったがその時
ローラ「ガオンハルト!!」
ローラの叫びと共にジノの右腕に衝撃が走る
ジノ「ちっ!最高のフィナーレを迎えられる所を!」
ジノはその場から少し距離をとった、駆けつけたローラの手には巨大な盾と銃と斧が合体した「ガンアックス」が握られていた
ローラ「貴様ァ!これだけの事をして生きてられると思うなァ!!」
ガンアックスを構えるローラ、そして次々とフローリア騎士団の騎士達も応援に駆けつける
ジノ「おやおや、観客が多いのは嬉しいですがそろそろおいとましましょうかね…リオ!!」
ジノが叫ぶと上空からナベリウスとなったリオが降下してきた。そしてその背に乗るジノ
ジノ「それでは皆様、また会う日までごきげんよう」
ジノを乗せたナベリウスは再び上空へと飛び立ち姿を消した。唖然とする騎士団、そして
ローラ「おい、ガオンハルト!起きぬか、いつもの減らず口はどうした!」
ガオンハルトの仮面を外し、体を揺すり問いかけるローラだがガオンハルトはあまりの出血により意識を失っていた
ローラ「どうしてだ…つい数十分前は呆れる程平和だったのに…どうして…」
あまりの惨状に膝から崩れ落ちるローラ。そこへキャッスルガオンの方から白い飛行機が飛んできてその場に着陸した。中から降りてきたのはジェットメイズと呼ばれる戦闘機の専属パイロットである「スカイメイド」の称号を持つ「オルテシア・アフタヌーン」だった
オルテシア「メイド長…ガオン…」
目の前の惨状に言葉を無くすオルテシア
ローラ「オルテシア、今すぐガオンハルト王をメイズの治療室へ!この場の騎士団員はこの親子をを含めた要救助者の救助にあたれ!」
そして、時は戻り…
エイパス「さてと、朝飯はなににするか〜」
エイル「果物食べたいわね〜」
村を後にしたエイパス達は村の付近にある街「メート」に来ていた。朝飯を求めてふらつく2人、ある露店を通り過ぎようとした時
???「おや、女の子連れとは隅に置けないね〜」
2人に話しかける女性
エイパス「あ?…て貴女はアズさん!こんなとこで何してるんすか?」
アズ「何してるって私のやる事は商売だけさね」
エイル「エイパス君、知り合いかい?」
エイパス「あぁ、この人はアズさん。魔法結晶とかでエンチャントしたアクセサリーを作って売り歩いてる商人だよ。昔世話になってな」
アズ「AS
エイル「独特の雰囲気の人だね」
エイパス「お前もな、所で商売はわかるけどなんでここに?暫くはフローリアへ行くって言ってなかったか?」
アズ「あんた知らないのかい?ほれ」
新聞を見せるアズ
エイル「なになに?フローリア共和国で破壊活動、騎獅王が重傷!?これって…」
エイパス「ありえない…ガオンハルトが生半可な奴にやられるようなタマじゃないのは俺も知ってる、一体何が…」
アズ「数日前の話だけど、これのおかげで首都への出入りが一時的に出来なくなってね、やむなくここへ来たという訳」
エイパス「…ガオンハルト」
話し込む3人の傍へ近づく人影、それはオルフェンデット楽団のリオだった
リオ「お姉ちゃん?」
エイル「ん?私に何か用かい?」
リオ「お姉ちゃん、聖具の匂いがする。やっと見つけた!」
リオは龍人の姿へ変身すると口に炎を溜め始めた
エイル「へ…?」
エイパス「危ねぇ!!」
周りにいた人達が逃げ出す中、エイパスは咄嗟にリオの下顎を下から殴り口を閉じさせ、腹に思い切り蹴りをいれた。蹴りをまともに食らったリオは後方へ倒れ込んだ。そしてすかさず剣を抜き構えるエイパス
エイパス「お前、龍人か?こいつになんの恨みがあるかは知らねぇがいきなりぶっぱなそうとはいい度胸してるじゃねえか?」
リオ「痛い痛いよ〜。お兄さん誰?邪魔するならお兄さんも焼肉にしちゃうよ?」
エイパス「は!焼肉になるのはお前の方だがな!」
一触即発の雰囲気の中、倒れるリオの横からもう1人姿を現した
ジノ「全く、剣士というのはどうしてこうも野蛮なのでしょうか?」
リオ「ジノ!」
ジノ「リオ、大丈夫ですか?初対面を殴り蹴り倒すなんて怖い人もいたものです」
腕を組み困り顔をうかべるジノ
エイル「ジノ、そしてリオ…たしかさっきの新聞に載ってたオルフェンデット楽団の名前もそんなんだった気が…」
ジノ「おや!私達のことをご存知で!いやはや、私達の楽団も有名になりましたね、リオ」
リオ「そうだね、ジノ!」
エイパス「オルフェンデット…そうか、お前らがガオンハルトを病院送りにした奴らか?」
ジノ「ガオンハルト…あぁ、数日前に身動き出来ない親子を庇ってボロ雑巾みたいになったあの!」
リオ「ボロ雑巾!ボロ雑巾!」
ケラケラ笑う2人、剣を握るエイパスの腕が震える
エイパス「…ふっ、なるほどな。ガオンハルトは親子を守って病院送りになったのか、なら仕方ないな。それがあいつの騎士道だからな」
笑みを浮かべるエイパス
エイパス「汚い手を使うのは結構だ、だが!勝負に関係の無い奴を巻き込む戦い方は気に入らないな。ちょうど良い、お前ら捕まえてフローリアに突き出せば貸しは作れるし、金欠も解消できそうだな」
ジノ「ほう、今の話を聞いて戦いを挑むと?流石はこの世界にやってきた一流の剣士と言うだけはありますね、リオはそこの女を捕まえなさい。私はエイパスをやります」
リオ「わかった!」
エイル「あはは…これは私も気張らないといけないね」
エイパス「やれるのか、チンピラとは訳が違うぞ?」
エイル「酔狂で博愛の魔術士を名乗ってないわよ?」
エイパス「面白い、それじゃあ初の共同作業といくか!!」
睨み合う両者、戦いの火蓋が切られようとしていた
次回「第4話 聖具共鳴」お楽しみに!
サクラサーガー黒鉄ノ騎士と博愛ノ魔術士ー @Mu-saaaan
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