第2話 それが私の生きる道

俺の名前はエイパス、異世界からこの世界へやってきた剣士だ。周りは「漆黒のバーサーカー」「歩く殺意」など様々な異名で読んできた。だが、そんな俺も空腹には勝てず倒れてしまうが通りすがったおかしな魔術士に助けられ…

エイル「あいじゃすきーぷばーにんらーぶー」

エイパス「呑気なやつだな」

歌いながらルンルンと歩くエイルとその後ろをついてくエイパス。2人は1番近くにある村を目指し歩いていた

エイル「そうかい?歌は心を軽くしてくれる魔法だからね〜」

エイパス「はぁ…」

エイル「ま、君も何れわかる日が来るさエイパス君♡」

エイパス「だといいけどな、それよりお前は何で旅してるんだ?」

エイル「私が旅する目的かい?それは勿論、世の人達に「愛と平和(ラブピース)」を教えるためさ☆」

その場でクルクル回りポーズを決めるエイル

エイパス「すまん、聞いた俺が悪かった」

エイル「度々やめろよ。傷つくだろ、私が」

そんなこんなで村へと辿り着いた2人

エイル「さてと、宿屋はどこかな〜?」

エイパス「宿屋って俺は金なんぞ…」

エイル「大丈夫さ 私はこう見えて…ほら」

エイルは肩掛けカバンからジャラジャラと金貨を鷲掴み見せた

エイパス「…まさか「愛と平和(ラブピース)」を広めて金巻き上げてるのか?」

エイル「そんな危ない宗教みたいな事してないよ!?これは私が旅に出る前に貯め込んだ物だよ」

何だかんだ上手くやっている2人、その時…

チンピラA「お前〜このリンゴ中身スカスカじゃねぇか、あ〜ん?」

チンピラB「こっちのトマトも全然みずみずしくねぇな、お〜ん?」

八百屋店主「い、言いがかりはよしてくれ!」

チンピラA・B「「はぁ!?誰に向かって意見唱えてんだ!?」」

2人の目線の先でなにやら揉め事が起こっていた

エイパス「チンピラが…まぁ俺に関わりのある事じゃねぇしさっさと宿屋探すかエイル…エイル?」

気づいたら目の前にいたエイルの姿が消えていた、辺りを見回すと

エイル「おい、そこのでかいのと小さいの!店主さんが困ってるじゃないか!」

エイルは揉め事に首を突っ込んでいた

チンピラA「なんだこの女ぁ〜あーん?」

チンピラB「てめぇには関係ないだろ おーん?」

エイル「関係大アリよ!困ってる人はほっとかないそれが私「愛に生きる平和の魔法使い」エイル・ラブピースさ☆」

クルクル回りポーズを決めるエイル

チンピラA「おい、こいつやべぇよ」

チンピラB「ホントだぜ」

エイル「コソコソ喋るな、聞こえてるし傷つくだろ、私が」

チンピラA「んなこたどーでもいいんだよ!邪魔するから容赦しねぇ!」

エイルに殴り掛かるチンピラA、だがそれを避けチンピラAの背中を両手で突き飛ばした。殴った時の勢いもあってかすっ転ぶチンピラA

チンピラB「アニキィ!?このアマァ!!」

エイル「ほい、クラック!」

エイルは指を鳴らすとチンピラBの足元に小さい穴が空きそれに躓くチンピラB。だが後ろからチンピラAが組み付いてきた

チンピラA「捕まえた!このまま絞め殺して…」

エイル「いやん、激しいボディタッチはお姉さん感心しないな〜リフレクション」

再び指を鳴らすと組み付いていたチンピラAが反発するかのように吹き飛ばされる

エイル「ほら、いつまで経っても勝てやしないんだから素直に諦めて帰ったらどうだい?」

手をパンパンとはたきながら言うエイル

チンピラB「も、もう許さねぇからな!」

チンピラBは懐から銃を取り出した、エイルも反応するが僅かに遅れてしまう

エイル「しまった…!」

チンピラB「死ねぇ…え、あ、ああぁ俺の腕がァァァァァァァ!?」

引き金を引こうと瞬間、勢いよく飛んできた黒い大剣が銃を握るチンピラBの腕を斬り飛ばした。血がダラダラと垂れる腕を押さえるチンピラB、そこへ歩みを寄せ落ちた大剣を拾い上げたのはエイパスだった

エイパス「おい、チンピラ。じゃれるのは構わねぇが玩具出すのは感心しないな?」

チンピラB「ひぃ、ひぃ、命だけは…出来心だったんだ、アニキに言われて…」

エイパス「言い訳はあっちで閻魔様にでも言うんだな!」

大剣を振り下ろそうとするエイパス

エイル「ほら、どいたどいた」

エイパスとチンピラBの間に入るエイル、そして落ちている血まみれの腕を拾い上げる

エイパス「おい、どういうつもりだ」

エイル「どうもこうもないだろ?今から腕をくっつけるんだ、こういうのは鮮度が命だからね」

斬られた腕同士を合わせると何も無い所から青い錫杖を出現させたエイル、それを握り呪文を唱え始める

エイル「この時、この前、これからと流れる時間の流れよ…聖杖エイルロッドに力を…この者の流れを戻したまえ「タイム・リ・ワインド」」

詠唱が終わるとチンピラBの足元に魔法陣が展開、切断された腕はみるみるうちに繋がった。それだけではないこのひと騒動で負った怪我や破れた衣服までもが元に戻ったのだ

エイル「…はい、おしまい。体の調子は大丈夫かい?」

チンピラB「あああああ!ありがとうございます!ありがとうございます!」

ペコペコと頭を下げるチンピラB

エイル「やんちゃな事するとこうなる場合もあるから気をつけるんだよ?わかったなら店主さんにも頭下げてあっちで失神してるアニキ連れてさっさと退散してね♡」

チンピラB「はい!わかりました!」

エイル「良い返事!はい、今回も一件落着ラブピース!!」

事件解決からしばらくして2人は食堂で食事をしていた

エイパス「…モグモグ」

エイル「どうしたんだいさっきから黙り込んで?味付けが合わないのかい」

エイパス「いや、このカツ丼の味に問題は無い。さっきのチンピラを何故助けた?あんな奴らが1人2人いなくなっても問題ないだろう。そしてもう1つ、助けた時に「聖具」を使ってたな、あれはどういう事だ?」

エイル「よし、順を追って話そうか。まずなぜ助けたかについてだけど勿論それは「愛と平和(ラブピース)」の為さ」

エイパス「答えになっとらん」

エイル「エイパス君の言ったように殺したも問題は無いだろう。だけどそれでは「平和(ピース)」しか生まれないんだ。彼らにも事情がある、取るに足らないことかもしれないがそれを理解し正せる可能性があるならばその可能性を選んだ方が良いと思う、それが「愛(ラブ)」の考えさ、人を信じ、正し、愛を持って接する。現に今回の出来事によって彼らは改心するきっかけを得た、それによって彼らが新たな人達と関係を結ぶ、そこから次の人、さらに次の人へと繋がり伝わるのさ。これが私の目指す「愛と平和(ラブピース)」、私はね、「人」を信じたいのだよ」

エイパス「それで自分が死んでもか?」

エイル「ふふ、私は死なないさ。と言うより死ねないのさ」

不敵な笑みを見せるエイル

エイパス「なに?」

エイル「これについては2つめの問の答えにもなるね。私は確かに「聖具」を持っている、時の力を使える「聖杖エイルロッド」をね。エイパス君は聖具についてはどれぐらい知ってるかい?」

エイパス「聖具はこの世界に存在する「力」の象徴だろ?俺もこの目で見たのは少ないが…」

エイル「その通り、現在サクラ大陸で確認されてる聖具は5つ。「聖剣ガオンカリバー」「聖槍ヴィオレイスピア」「聖掌カヤパグラブ」「聖玉ディヴィニスフィア」これらにはそれぞれが司る力を最大限に引き出す力がある、もしかしたら経験あるんじゃない?」

エイパス「あぁ、ガオンカリバーは「火」ヴィオレイスピアは「風」だったな」

エイル「だがその力を人の身で使うには代償が発生する、呪いと言ってもいい、知ってたかい?」

エイパス「…それは…知らなかったな」

エイパスは濁したが知っていたのだ。過去に戦ったガオンハルト、ヴィオレイトからは直接聞かされていた。ガオンハルトは過度な力を使う事で自身の命を燃やしている事、ヴィオレイトは大技を使うと異常なまでの破壊衝動に襲われる事を

エイル「私の聖杖は時の力を使えるとびきりのチート聖具だけどその代償は人として死ねなくなった事だ。ほら、杖の装飾に砂時計が付いてるだろ?これが落ちきった時が私の死ぬ時だ」

聖杖を呼び出し見せるエイル。砂時計の砂は2割程度が下に落ち溜まっていた

エイル「この砂時計の砂が落ちる仕組みはね、私が時の力を使った量なんだ、今日みたいに人1人を数分前の状態に戻すくらいなら砂は落ちはしないがこの規模が大きくなったり、時間が長いと砂は落ちる、しかもその量は予測できない。これによって私は首を斬られようが心臓を取られようが死なない理屈さ。だけどね、私は私のやりたい事をする為の対価として受け止めてるから特になんとも思ってないから安心して」

笑顔を見せるエイルだがあまりの内容に食べ進める箸が止まるエイパス、そして長い話と食事が終わり2人は宿へ戻るのだった


第2話、少し長くなりましたが今回はここまで!

エイルの秘密を知ったエイパスは何を思うのか、そしてエイパスを狙う影も…

次回「第3話 黒鉄ノ剣士VS窃盗楽団」

お楽しみに!







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