チェイサー ~鍋島は見た♡~

 ※だいぶ好き放題にやってる回です。

 

 はあ、やだやだ。最近全然誰とも会わないから寂しいわね。

 そのせいで登場回数もめっきり減っちゃったし。


 皆さまお久しぶりでございます。鍋島徹夫と申します。

 山崎義隆さんの専属スタイリストの者です。※ダンディな低音ボイス

 (その時、山崎は背筋がぞわっとするのを感じた)

 

 最近六花に行っても玲ちゃんも山崎さんも見ないのよねえ……。ついに二人で愛の巣でも見つけちゃったかしら。でも雪子さんによるとそうでもないみたい。


 ま、アタシは六花のシニアクラブ代表として、今日も一人でしっぽり飲むとしますか。しっぽりね。


 見慣れた通りに向かう途中、向こう側から見慣れた女の子が歩いてくる……。

 やだ! 噂をすれば玲ちゃんじゃない! 思わず駆け寄ろうとしたけれど、一旦ブレーキをかけて物陰に隠れた。


 なぜって、キリッとしたお顔がトレードマークの彼女が物憂げな表情を浮かべてたから。どうしたのかしら、悩みごと? んも~いっぱい美味しいお酒飲ませたい~。ウズウズ。

 玲ちゃんはしばし何か悩んだ表情で二、三歩歩くと、ついに近くのベンチに座ってしまった。


 だめ、玲ちゃん! ベンチに座るときはハンカチか何かしかないと、お尻が汚れちゃうわよっ!! んも~見てられない。目線が保護者になっちゃう。

 すると、玲ちゃんはバッグからスマホを取り出してあーでもない、こーでもない、とぶつぶつ呟き始めた。

 やだもう~うちの真面目娘は目の前の事に集中すると周りが見えなくなっちゃうんだから!


 玲ちゃん、今のあなた、完全に不審者よ♡


 そんな玲ちゃんにこっそり近づいて、びっくりさせてやろうと思ったアタシは、またまた見覚えのある男性が歩いてくるのに気が付いた。


 や、やだっ……。山崎さんだわ……。どうしましょ。

 半そでシャツから覗く、少し焼けた腕。スーツが似合うすらっとした長身。さらに暑さで鬱陶し気に目を細めてて、アラ~! かわいい。※野太い声

 いつも思うけど、彼って姿勢が良くて、歩き方や立ち姿勢がしっかりして綺麗。わかる人にはわかるわ。きっと体幹トレーニングで鍛え上げられたbodyよあれは。しかもいっつも良い匂いするのよね。ハア、添い寝したい。寝苦しい夏の夜に、うちわでパタパタあおいだりなんかしちゃって美しい寝顔をペロ……。


 ダメダメ! 妄想の世界にコンニチハしてる場合じゃない! 今をときめく二人が接近中よ! これは神様とアタシがプレゼントした運命の再会。


 山崎さんも、玲ちゃんに気が付いたようで心なしか歩く速度が上がったわね。いいわ、そのまま行ってゴールを決めなさい。


 残念ながら、今日もまた一人でしっぽりのパターンね。でも、いいの。

 今は若い男女の行く末をつまみに、美味しいお酒を飲むことにするわ――……。


 

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