放射能汚染された聖人の遺体
このけたたましいサイレンを聞けば、誰だって非常に不味いことが起きていると分かるだろう。私たちは慌てふためいて防護服を着用し、ガイガーカウンターを手に取った。
指令室のモニターによると、放射能漏れが発生して聖人の遺体が汚染されらしい。それで何がどうなるのか分からないが、全ての問題に対処するのが私の義務だった。白を基調とした古いSF映画のような指令室。白い防護服を着込んだ者たちが中央へ集まり、何事か話し合っている。
情報が足りなかったので、取り敢えず現場まで行くことになった。私を先頭に、清潔な通路を一列になって進む。何度も何度も曲がり角を通過し、いよいよ目的地に差し掛かった。この角を曲がれば聖人の遺体がある。
右手にガイガーカウンターを持ち、恐る恐る角から腕だけを突きだした。針が振りきれて警告音が鳴り響く。右腕の灼熱感に私は悲鳴を上げた。
後方へ下がって防護服を脱ぐと、私の右腕は真っ赤に焼けただれていた。熱湯を掛けられたような痛みがする。間違いなく放射線熱傷だ。防護服を貫くほどの放射線を浴びて、生きていられるはずもない。
目を覚ましたのは、実際に右腕が痛んだからだ。まだ夢と現の間にいた私は面食らって、寝間着の袖を捲り上げた。暗くて何も見えない。急いで電気をつけるが、私の右腕は焼けただれてなどいなかった。
安堵すると共に、夢でも痛みを感じるのかと妙に感心した。とてつもないリアリティだったのだ。放射線熱傷など一度も経験したことがないのに、きっとこんな痛みだと自信をもって言える。
時計を見ると、午前五時半だった。悪夢も中途覚醒も慣れたもの。こういう時どうすればいいか、私は完全に理解している。
手早く煙草を巻き、ロラゼパムを唾液で飲み下した。
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