1弦の動揺
ハ〜イ♪ ありがとーっす! いいでしょいいでしょ? 新品張りたてのオレ、キラキラでしょ〜? ニューヨークの倉庫からひとっ飛びでやってきました〜♪ ミーはニューヨーク帰りざんす! ってね☆
え、よく知らないけど。オレら、ニューヨークの倉庫から運ばれて来たって、誰かが言ってたから……違うのかな………たしかにそう聞いたんだけど、なんか自信なくなってきた。
オレって、いつもそうなんす。なんか、自分の立ち位置がはっきりしないっていうか……日頃から揺らされ過ぎてるせいかなぁ。自分を見失っちゃうことがあるんですよね……こう、自分が揺らぐというか。
ほら、うちのダンナってチョーキング多用する人でしょ。もうさぁ、オレなんてもののついでみたいに揺らされるからね。「お、ここでもいっちょ揺らしとくか、クイクイッ」みたいな。なんでもかんでも揺らしゃぁいいってモンじゃないっすよ……ま、でもカッコいいけどね。やっぱ。
え、2弦が文句言ってました? なんで……って、あれか。どうせグイグイ来て邪魔だとかなんとかでしょ。そんなことオレに言われてもね、しょうがなくないですか? うちのダンナがそう弾くんだから。要するに、嫉妬ですよね。オレの活躍に対する嫉妬。
弦高が高くて弾きづらそう? それはぁ、6弦とか5弦のアニキたちがネック引っぱりまくってるからじゃないんですかね? ミーのせいじゃ無いざんす〜☆
細くて指に食い込むって? それは、まぁ……うん。しょうがないじゃん……
そうは言っても1弦はソロの花形。だいたいソロのエンディングは1弦の高音のチョーキングで終わるよね。なんでだろう。やっぱ、カッコイーからかな。へへ。
だからね、チョーキングビブラート、フィンガービブラート、単音で弾くときのボトルネック、などなど、1弦はとかくこねくり回されがちなわけですよ。
そんで、弦がほっそい、ほっそいからね、音量がさほど出ないんです。だから結構強く弾かれがち。なのでキレがち…いや、うん。キレちゃいないですよ。
幸いなことに、うちのダンナはサドルとナットを虫眼鏡で見ながら、高さやらエッジやら緻密に調整してくれるんで、座り心地は良いんです。おかげさまで、それほどキレないで済んでいるんですけどね。
さすがに1音半のチョーキングは辛いけど、ダンナが心地好さそうな顔をして奏でるもんだから、そりゃね、ミーも頑張ってイー音を出すざんす〜って、思う訳です☆
うん。マイブームなんですよね。ミーはナントカざんす〜☆っていうの。一周回って新しくないですか? いや、新しければいいって訳じゃないですけど……え、面白くないですか? だってほら、オレ「ミ」の音じゃないですか。だから「ミー」って……えっ、3弦さんが似たような駄洒落を? やめてください、あんなオヤジギャクと一緒にしないでよぉ。ざんすのマイブーム、やめよっかなぁ……
相変わらず、心揺さぶられまくりな1弦さんでした。
さて、これで全ての弦が張り変わりましたよ。みなさんとても嬉しそう。早く音を出したくてうずうずと、ピックであるボクに目配せしてます。
おやおや? ボディさんとネックさんも何か言いたそうな顔をなさってますね……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます